表紙枠の謎

サンデーコミックス表紙の最大の特徴といえば、(秋田書店内の正式名称ではなんと言うのかは知らないが)この黒を基調とした「ガクブチ枠」であろう。
同レーベルラインナップの内容と作家はバラエティに富んでいるが、基本的にこの枠の中に収まることによって、ほかのコミックスにはない強烈な統一感を醸し出している。
また、書き文字レタリングを基調とした構成は古き良き昭和のデザインワークの香りを漂わせるとともに、単色外枠+白内枠の組み合わせが、鮮やかな色彩が使われることの多かった「手描き・手塗り」の昔のマンガのカラー原稿の色合いをビシッと引き締めている。

この「枠」にもいくつかの種類があることは考察ページでも述べたが、もう一度再掲して概要を眺めてみたい。
黒枠 青枠 紺枠
もっとも一般的に親しまれた基調的デザイン。
黒枠の中に細い白枠があり、その中に表紙イラスト・タイトルロゴが収まる形で、並べた時の統一感を強めている。
楳図かずお作品御用達の印象が強いが、「キカイダー」「TV天使」もこの色。 「忍法十番勝負」および「バンパイヤ」新版(4巻本)のみの枠色。多少色味は違うが強引にカテゴライズしてみた。
白枠
「男どアホウ甲子園」および特撮・アニメコミカライズ作品の一部の装丁をこのように区分した。
「男どアホウ〜」は前半と後半でデザインが変化しており、後半は限りなくチャンピオンコミックスに近いデザインになっている。
コミカライズ作品は、例のように表紙がマンガオリジナルの絵ではなく、TV番組から持ってきた写真やセル画像の場合にこの装丁となるようだ。(コミカライズでも、漫画作品固有の絵が表紙になっている場合は黒枠レイアウトとなっている。例:「スペクトルマン」「マジンガーZ」など)
またこの場合、背表紙にはジャンル表記がなく、その分番組画像がレイアウトされた独自のデザインとなる。(「ザ・シャドウマン」のデザインもやや迷ったが「白枠」とした。)
枠無し 黄枠
1980年代終盤に発行された単行本(「生き人形」以降)は枠のないデザインとなり、表紙だけでは他社単行本と見分けがつかないライトな印象になる。
実質的にここから枠は廃止になる。
なお、黒枠が一般的だった時期においても、さいとう・たかを作品は基本的に額縁枠を用いないデザインとなっており、例外的だった。
1999〜2000年にかけて発行された手塚治虫再販もの特有の枠。正確には額縁というより、枠無しレイアウトに上から飾りフレームを置いた印象。
背ジャンルも復活。個人的には「講談社手塚治虫全集」の額縁に似ているのがちょっと気になる…
さて、白や枠無しについては表内の説明であらかた語ったのだけれども、このシリーズのデザイン面における最大の謎は、「なんで枠が黒だったり青だったりするのか」ということである。
白枠については前述したように、「コミカライズ作品」かつ「表紙が番組スチール写真」という分かりやすい特徴があるのだが、「青枠作品」の基準がまったくもって不明なのである。この謎は現在全く解明できていないのだが、「どのように謎なのか」ということだけを並べておこうと思う。

●青枠の作品
枠ありの作品はほとんどが黒枠なのだが、その中で青枠になっているのは限られている。
・楳図かずお作品(第2期で枠無しになった「生き人形」「キツネ目の少女」「百本めの針」を除く)
・石森章太郎「人造人間キカイダー」
・ちばてつや「テレビ天使」


以上の作品のみである。
●仮説1:少女誌連載説
「TV天使」は、ちばてつやが1968年に「週刊少女フレンド」に連載していた作品で、表紙のジャンル表示もレーベル唯一の「少女COMICS」となっている。主人公の少女が女優を目指すというストーリーらしい。
今「ちばてつやの少女漫画」と聞くとそれだけで相当の珍品に思えるが、1960年代は男性作家が少女漫画誌に執筆するのはごく普通のことだったし、ちばてつやも多くの少女漫画を発表している。(もっとも本人談では少女漫画誌での作品にはあまり気に入ったものはなかったらしいが…)

一方、楳図かずおの初期ホラー作品も、そのほとんどは少女漫画誌や少女向け貸本単行本として発表されたものだった。
青枠のものだけを抜き出してもこんな感じである。
黒いねこ面 少女フレンド 1966
ミイラ先生 週刊少女フレンド 1967
おろち 週刊少年サンデー 1969〜1970
のろいの館 少女フレンド 1957
恐怖 平凡 1966〜1970
アゲイン 週刊少年サンデー 1971〜1972
鬼姫 週刊少女フレンド 1967〜1968
週刊少女フレンド他 1960〜1967
ロマンスの薬 なかよし 1966〜1967
まだらの恐怖 少女フレンド 1965
そのため、最初は「少女誌連載の作品を青枠にしたのだろうか?」とも考えた。
しかしそうなると、「週刊少年サンデー」連載の「キカイダー」が青枠になる理由が説明できないのでこの仮説は没だろう。
●仮説2:怖いから
青枠と言えば楳図作品、楳図作品と言えば基本ホラー、である。
ということで、「ホラー作品の表紙が黒枠だと、なんかもう遺影みたいで怖すぎるから青にした」という可能性も考えてみた。

で、実験的に楳図ホラー作品の表紙枠を黒に変更してみた。
実験台は、子供時代、巻末宣伝ページで見るだけで怖かった「のろいの館」を採用。

やらかしておいて何だが、別にそんなに変わらないような気もする。
「赤ん坊少女」の気色悪さが青だの黒だの枠の色なんぞに左右されないほどのインパクトだからなのかもしれないが。

それより何より、「キカイダー」も「テレビ天使」も別に一つも怖くないわけで、この説も没。
●楳図先生が黒より青をお好みだったから
意外とこんなところなのかもしれないが、その色がほかの2作品(しかも別に共通項なし)に使われているのがまた謎である。
また、ちばてつや・石森章太郎ともに、サンデーコミックス収録の別の作品では普通に黒枠だし…
●その他の謎
「同作品でなぜか一部の巻だけ青じゃない」という統不統一な作品が2つある。

1つは「キカイダー」だが、なぜか2巻だけが黒枠。


また、楳図かずおの「アゲイン」では、1巻だけが黒枠となっており2巻以下は青枠である。

両作品ともに現在でも重版が続いており入手可能なのだが表紙枠の色はこのままであり、正式な仕様として長年流通している。
以下強引に妄想。

・「キカイダー」の場合、なぜか1巻だけ青枠で発売し(単に枠内の絵の背景が黒かったからか?)、2巻から通常の黒色に戻してみたが統一感に欠けるのでやっぱり青にした
・「アゲイン」は、ホラーものではないので黒枠にしてみたが、そのせいで楳図作品と思われなかったor「爆笑COMICS」と書いてはみたが恐怖ものと勘違いされたので、2巻から青に戻した


しかしやっぱり謎は深まるばかりである。なぜ1冊だけ黒なのか…
ちなみに「TV天使」全3巻や、「おろち」などの複数巻あるタイトルは、最初から最後まで青枠で統一されている。

●紺枠
「忍法十番勝負」の他は、新版の「バンパイヤ」のみが紺(色味はけっこう違う)。
新「バンパイヤ」が紺の理由も良く分からない。
単に旧版の3巻本との混同を防ぐためなのかも。
●DNA
1985年以来の新刊については、枠が事実上取り払われてデザインが変更されたことは前述した。以後「枠デザイン」を重版分以外で目にする機会はなくなったのだが、一つだけ嬉しい例外がある。
左は、2004年に発売された秋田漫画文庫の「サイボーグ009別館 009 a la "CULT"」の表紙なのだが、ご覧の通りサンデーコミックスの懐かしい装丁を再現したデザインとなっている。
サンデーコミックスで作品に親しんだ世代にとってはなかなかGOOD JOBな表紙でうれしいところ。(背表紙もちょっと気が利いている)

また、1998年に出た秋田漫画文庫版の「マンガ家入門」でも、先の「a la "CULT"」ほどではないがそこはかとなくデザインにサンデーコミックスとの共通項を感じないでもない。
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