21世紀も目の前なのに、やっぱり日本人なら演歌らしい。
 何しろ、じじばば需要で、CD全体の売り上げがもの凄い伸び方らしいからな〜。
 というわけで、「孫」の話である(笑)。

 この歌のリリースは、実は結構以前に遡るのだ。
 私と相方が「孫」に出会ったのは、大泉さんのホームグラウンドにほど近い街(当時、相方が在住していた)のスーパーのポスター。
 屋外野菜売場のレジ裏に、「孫」のポスターが貼ってあったのである。
 写真は、孫を連れた大泉さん、そして「何でこんなに可愛いのかよ 孫という名の宝物」と歌詞が添えられていた。
 コレを発見した時は大笑い。せいぜいご当地の冴えない歌手でしかなかったし、「『何でこんなに』って言われても!」と爆笑するしかなかった。はっきり言って、「VOWネタだ」としか思っていなかった私達。
 この歌が草の根で広がり、よもや2000年のメガヒットになるなんて、当時は想像もつかなかった。

 山形の川柳界の巨人、黒沢かかし氏が、川柳作法について語ったとき、こう言ったそうだ。
 「孫は題材にしないほうがいい。祖父祖母が孫を可愛いのは当たり前すぎて、訴求力に欠ける」と。
 その話を聞いたとき、納得して頷いたものだったが、少なくとも歌の世界では十分な訴求力があったようだ。
 今や「女の子バージョン」(三番の「端午の節句」関連の歌詞を「桃の節句」関連に変えてあるもの)まで流布してるし、大泉さんは山形じゃ引っ張りだこ。3月時点で今年最もホットな山形人確定の勢いである。

 何かなあ。別に文句をつけるつもりはないけど、全編これ「孫可愛い」の力技の前には、孫はおろか子供すらいない身でも思考停止を余儀なくされるもんなあ。呆れる前に「そういう方法論があったのか」と感心すらしかねない自分に気付くのである。
 この歌に触発されて、「あ〜ら●●さん、お宅でお孫さんはまだですの?孫はいいですよ、可愛くて。早くお嫁さんに産んで貰わないと。とかほざくアホ老人が増えないことを祈るばかりだ。でも増えてるんだろうな。

 ところで、「孫」の浸透ぶりは、世人の想像を遙かに越えているようなのである。
 この前、同僚がふざけて「孫」を着メロにしていたのだが、それを聞いていた別の同僚が、
「うちのクラスの生徒、勉強しながら『孫』口ずさんでるんだよ。しかも、ソラで二番まで。」
 二番まで・・・か・・・。女子高生が。恐るべし「孫」。