<バカ本解説>
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※ブログのほうにレビューを追加しましたので、詳しい内容についてはそちらをご覧ください。
これの凄まじい点は、ストーリーもさることながら、絵にもあります。
どう見ても上手とは言えない、校門で配られるキリスト教の怪しい小冊子に勝るとも劣らない、エキセントリックな絵柄。半端にリアルで、嫌な感じの銅版画、といった印象です。
その上、妙〜に力が入った書き込み。そこからは「とにかく俺はプロレスが好きだ!新しいプロレス漫画を描くぞ!」というもの凄い意気込みが伝わってくるのです。
「こんな漫画、誰が覚えているのか」と思っていたら、大槻ケンヂ氏がオールナイトニッポンで取り上げていて、さすがだと思いました・・・
「天才バカボン」「天才バカボンのおやじ」「おそ松くん」の特選集・その他に加え、あの幻の「レッツラゴン」を抄録。濃いぞ〜。
漫画の構造それ自体を利用・もしくは破壊する、いわゆる「メタ漫画」。その創始者にして絶対無二の作り手が赤塚不二夫であったことを、改めて思い知らされる。(言動は完全無欠の酔っぱらいだけどね。またそこがいいのだ。)
「バカボン」後半の連載で好き勝手にやっていた、常軌を逸した実験(または目先の変わった手抜き)の数々が集結している。
表現が微妙な対象にだって、赤塚大先生はお構いなしなのだ。
(例)「天才バカボン」
パパ:(ちょっと表現が難しそうな人を発見して、電話口で)
「もしもし、病院ですか?誰か逃げてませんか?」
電話「%&@¥¥”<!」
パパ「・・・(受話器を置く)何を言っているのか分からないのだ!」
バカボン「患者が出たんだね!」
・・・患者って・・・バカボン・・・
まず、装丁がどこから見てもゲーム攻略本風。(事実、購入した書店ではゲーム本の棚に置かれていた。製作サイドとしては、我が意を得たりという所だろう。)帯からカバー見返しに至るまで、巧妙なパロディとなっている。
「ファミ通PS」に連載中。PSのゲームを題材に、それまでゲームに興味のなかった筆者がズブズブとはまり行く様子が手に取るように分かる。
巻末付録の「かるた」がまたディープかつ穿ったネタ(例:「れ」→「レベルアップだ仲間をねぶれ」(タクティクスオウガ)で、この人はホントにゲームをプレイしてマンガを書いとるなあ、というのが伝わってくる。マンガコーナーになければ攻略本コーナーへ走れ!
連載中の正式名称は、「朝日のようにさわやかに」。
毎回4頁という短いページ数の中で、アホらしくも労作としか言いようのない作品が展開される。
例えば、「クイズ!司会が百人!」では、本当に4ページ内で102もコマを切り、100人が自己紹介している。(100人の中には「ニップル男爵」だの「キリキリキッド」だの「稗田礼二郎」だの、分かりづらい人物が沢山だ!あんまり私を喜ばすなよ〜)
また、「百人の刑事」では、見開き一杯で、空港滑走路の上を横一列で歩く百人の刑事の姿(あだ名付き。中には「通り魔刑事」「痴漢刑事」なんていうとんでもない者が!)が書き込まれている。
この人に関しては、ページいくらの原稿料というのは理不尽だと思うがどうか。
他にも、「老いらく番長」「寝たきり超人」等、タイトルを見て分かるネタが満載。すごいっす。
なお、先の「クイズシリーズ」では、「クイズ!あだ名は何?(出演者を一見してあだ名を当てるのだが、だんだん酷いあだ名になっていき、出演者が泣いて終わる)」や、「クイズ!問題は何!」などがある。
「○○でもするか、ヒマだからな!」
主人公・帽子男の口癖であるこの台詞は、そのまま作者の言葉でもある。
漫画家が「ヒマ」。このシチュエーションの意味するものに、なんだか落涙を禁じ得ないわけだが、どの雑誌でも何だか不定期に隙間の仕事を引き受ける上野顕太郎(通称、うえけん)にはとてもしっくり来るのだ。
帽子にトレンチコート、何だか分からないが「組織(黒スーツ、サングラスなので悪そうだが)」に追われる、一見ハードボイルドな主人公・それが帽子男。相棒と思われる謎の女と、ひたすらよく分からない逃避行を続けるこのシリーズ、何とか単行本2冊分に至った。
この人の漫画作風は、とにかく「律儀」。こんなに変なのに「律儀」なのだ。
例えば、敵から逃げ込んだ場所に、子連れの女がいる。赤ん坊に泣かれては居場所がばれるので、必死にあやそうとする。そのあやし方が、「ビデオのスロー再生と文豪の”室生犀星”は似てるよね〜」。こういった、「あんたしか気づかんわ!」と突っ込みたくなるネタがうえけんの真骨頂だ!そして、背景には室生犀星の似顔絵が、律儀な書き込み(生没年まで付き)で描いてあり、それが笑いを誘うのだ。
その律儀さは「うえけんの五万節(「五万節」知らない人は、クレージーキャッツのベスト盤でも聴くこと)」で爆発。「お客様何名様ですか?」「五万人だ!!」というシーンでは、見開きに一杯のモブシーン(1000人はいってる)。こんなことしてるから、「ヒマだからな!」という言葉がリアリティを持って聞こえる。そんなうえけんの現在の(不定期)連載の作品名は「ひまあり」。むう。
最初見たとき、誰もが「ど、どうしてジャンプにこんな漫画が??」と戦慄したことだろう。
まあ、ジャンプの歴史を振り返ってみると、「トイレット博士」「1・2のアッホ!」「東大一直線」「すすめ!パイレーツ」などなど、常にギャグのアバンギャルドを作り続けていたわけで、そんなに驚くには当たらないかもしれない。いつの間にか「王道少年誌」となっていたジャンプには、新鮮だった、とは言える。
で、第一印象は「何じゃあ、この漫画・・・」。決して最初からお気に入りだった訳じゃないんだけど、なんだか妙な「引っかかり」を受けたことは事実。結局、数週間後には、自分から「マサル」を求めてる自分に気づくのだった。
ネタは古いわ、ノリは変だわ、キャラは更に変だわ、フェイバリットに昇格した時点でも、この作品が大衆受けするはずもなく、10回打ち切りコースだろう・・・と思ってたのに、結構各年代から好評だったようで、「ジャンプの購読層がそれだけ変わったのか、単に世紀末なんだか?」という複雑な心境にもなったのだった。
読み返してみると、エキセントリック&マニアックなギャグの根底に、「部活動の楽しさ」みたいなものが流れてるような気がして、ちょっとノスタルジーに浸る自分がいたりもするのだった。
で、連載終了の経緯は全く分からないんだけれども、「続きすぎなかったこと」・・・つまり、何時までも続けて、衰弱や枯渇が見える前に、濃厚なカタチで連載を締めくくれたことは、傍目からは良かったんじゃないかと思う。
すまん、この作品について解説はできません。
だってそうすると、ソレ系の単語が増えて、このサイトの「有害率」が上がっちゃうんですもの。
まあ、なんというか、子持ち独身サラリーマン・前田郷介の物語・・・なんですけど。周りの人間に、殆どまともな性癖のヤツがいない。榎本俊二の作品群の中でも、最も下品な作品の位置を意識して書かれている。
不意にスカトロになったりするので、間違っても飲食中には読めない漫画だ。(飲食中に読むなって。)
漫画手法としては、脱糞や嘔吐(ああ、ATOKが腐る。)のオノマトペが独創的と言えよう。
「週刊モーニング」に連載中だが、その「下品の彼岸」まで行ってしまった作品に対し、担当編集者が付けている「これまでのあらすじ」が、ウソ八百の美しいものだったり、人間の業を語りなんだかちっともあらすじじゃなかったりして、実に楽しい。また、妙にさめたハシラの文句。これらと、無軌道な本編のコントラストが何より楽しかったりするので、単行本よりもモーニング本誌で読んだ方が絶対面白い。
とはいえ、この作品、なぜか結構休載する。目次には「作者取材のため」とあるが、この作品でどんな取材ができるのか、考えれば考えるほど謎である。
すっかり文章の人として力を認められたオーケンの、エッセイ&対談集。
ランパブ突入記、合法ドラッグ(ぬばたまのすり下ろしでトリップ→ほぼ失敗)体験記などのエッセイもキてるが、この本の真骨頂は対談にあり!対談の相手が、後にオウムについて話題になった横山弁護士を初め、濃すぎる面々。特に、コンタクティー・岡さんの「宇宙人とコンタクト」話は抱腹絶倒間違いなし!
この人選も、それに対する受け答えも、のほほんスタンスで超常現象をこよなく愛するオーケンならでは!完成度の高い一冊っす。
大学時代、漫研で同期だった大和田君の単行本。(少年エース連載中)
超教育困難校・瓦崎工業高等学校の野球部は、(素行不良で他の高校をクビになった)実力派揃い。ソレを率いる我らが主人公・太田さん。
無軌道に甲子園を目指す男。超絶カリスマということは誰もが認めるが、いかんせん野球のルールを知らない。全くと言っていいほど。っていうか、単行本一巻の中で、太田さんが野球をしているシーンは一度もない。(二巻ではやってた。)
また、ママ限チャリ・パッソルに「バルカン1500」、「RGガンマ500」といった化け物マシーンのエンジンを搭載した恐怖のマシン・「パッソル改」を愛機としている。
結局、太田さんが甲子園を目指す動機も謎のまま、甲子園で見事勝利を収めるのだが……。
それにしても、藤村甲子園といい、太田さんといい、甲子園には魔物の他にどアホウが棲むことになっているのだろうか?
タイトル通り、枠線一本に至るまで全て木版画で製作された、コストパフォーマンスの異様に低い漫画。
あ、一本だけ紙版画の回があるけどね。
ことあるごとに出没して「版画を彫れぇ」「版画を馬鹿にしたろう。」「年賀状を(版画で)出さなかったろう。」と激昂する、棟方志功テイストのニクい奴、それが主人公・版画男。説明終わっちゃったよ。
見物(バカ的に)の一つは、「網走版画イチ」「ハンガコハンガ」「アストロ版画」といったアホウなサブタイトル。
そして、隅々まで徹底して版画である点。なんと、奥付の「無断転載禁止」の注意書きに至るまで木版画!
頭下げずに何とする。
「カスミ伝(全)」は、かつて少年キャプテンに掲載、(準?)メジャー誌で「唐沢なをき」の名を知らしめた、記念すべき作品。描線が現在とは違ってたり、女の子を可愛く描こうという努力が見られ、なかなか初々しいが、「漫画の構造を使ってギャグを作る」という試みは、既に積極的に行われている。
で、「カスミ伝S」はその10年後に製作された続編。
この頃になると、読者も編集者も「カラサワだからしょうがあんめえ。」と分かってきている事もあり、前作にも増して、メタ漫画のやりたい放題。
本当にスクリーントーンを100種類使った「トーン百番勝負」、メインキャラ以外を、全てモリサワの変なイラスト写植
(本当に変なんだ、これが。)を使い、モリサワフォントを使いまくった「モリサワ漫画」、指定されたところに、中とじになったシールを貼って埋めていく「シール漫画」、巨大コタツの中で戦闘、という設定のもと、真っ赤な紙に印刷され、赤い部分は描かれていない「遠赤外線漫画」。・・・等々、枚挙にいとまなし。
こういうメタなアイディアは、考えつくことはあっても、実際に相当の労力を払って実行する作家は少ない筈だ。
唐沢なをきが、数作分の手間をかけてこういう漫画を描いてくれること、それを編集サイドが理解し、途中で紙は変わるわ、シールは入るわ、中間の4ページだけ4色カラーになるわ(「忍法4色カラー」のためである!)の装丁が、企画として通ったことに感謝したい、と思わずにはいられない。
厳密にいえば、windowsユーザーである私には、この漫画を楽しむ資格はないのかもしれない。
そう、これはマックユーザー漫画家である唐沢なをきによる、マックユーザーの為の漫画。
更にいえば、まだimac発売の遙か前。Macの話題といえば、「アップル、すわ身売りか?」って記事しかなかった頃、この作品は生まれた。
この作品を貫くのは、「何があろうと、例えやたらと新製品ばっかり出て頭にこようと、やはりmacが一番であり、ウィンドウズなんざタダの猿真似よ、ぺっぺっ。」な姿勢である。
作品スタイルは、一回フルカラー二ページ。一回ごとに元ネタが違い、著者名の下に「○○漫画」と銘打たれる。
この元ネタが、いちいちカルトでもの凄いのだ。「ゲームセンターあらし」「タイガーマスク」などは序の口、「マタンゴ」、日野日出志、「猟奇王」、「くもとちゅうりっぷ」、「サミット学園(このページだけ、紙が新聞風になっている)」、「海底人8823」、「レッドマン」、「赤色エレジー」、「ひおあきら版ヤマト」、「宇宙怪獣ギララ」・・・なんかもう、さすがである。
やばいネタとしては、北朝鮮「金成日を讃える歌」のパロディである「主体思想漫画」や、ブーフーウーを絵柄そのままでエロ豚として描いた「愛欲色豚漫画」(N○Kからおしかりを受けたらしい。)など、いやにパワフルだ。(あんまり面白いので、リスト作成しました。)
macユーザーは、より楽しめるのだろうか?ユーザーでこの作品を読んだ方、是非教えて下さい。
何だか鉄人タッチな年代のこと。
主人公・少年キッドは、普段は「記号論とソシュール」「解脱とイニシエーション(ちなみに事件前)」「シーフードマリネの作り方」「前衛紙芝居・砂の嵐」など、マニアックな演題を披露している紙芝居屋である。しかしひとたび事件が起これば、「親に心配かけまいとアッという間の早変わり」で少年キッドに変身、巨悪に立ち向かうのだ!
その彼は、ひょんな事から、第二次世界大戦中に、秘密裏に決戦兵器として作られたロボット・鉄鋼無敵科学大魔號の操縦者になってしまう。
「このロボットは精巧に出来ているので、操縦者がパンチすればロボットもパンチするのだ」「精巧に出来ているので、ロボットの腕が折れれば操縦者の腕も折れるのだ」・・・って、「エヴァ」先取りかい?
また、毎回違った設定で登場する謎の「山田恣(やまだ・ほしいまま)博士」や、報道少女・江戸川ゆに子(これはウルトラQのパロ)など、サブキャラも唐沢チック。
勿論細かいパロが一杯だが、コマの全てに番号ふっている(昔は、こうやって読む順番を指定していたのだ)、脇に一行のアオリが入る、ソレっぽい紙に、色替えの印刷など、徹底して「1950年代少年誌(またはその別冊付録)テイストにこだわっているのがヨイ。初期の名作。
見開き2頁で一本のスタイル。
テーマはフリーで、パロディ有りメタ漫画ありの構成。
個人的には、米一升炊いて、その上に岩海苔絞って書いた米漫画、「米マン」が好き(後でアシスタントと食ったという)だが、ここでのエポックは、何と言っても「トキ課長」ネタであろう。
自分が特別天然記念物であるのをいいことに威張り散らし、部下に自分を讃えさせ、無理に佐渡島には連れて行くわ、ドジョウ丸飲みのご相伴を強要するわやりたい放題。(そもそも、何でサラリーマンやってるのかは謎。)ちなみに、トキの卵が孵る前に製作された、連作シリーズである。何と言っても、「いい加減にしろ」と突っ込んで、死んだだけでオチになるので、随分気に入って書いていたようである。
この「トキ課長」ネタは、後の連載「けだものカンパニー」でも展開された。
何でだか、人間の社員の他に、動物社員を多く抱える会社が舞台。
レギュラーとしては、ネコ課長、真性Mの犬山君(女王様に「この卑しい犬ッコロめ!」と罵倒されて恍惚としている。それって別にプレイじゃないような気が。)、実はパンダじゃないらしいことが端々でほのめかされるパンダ良輔くん、そしてトキ課長。(後に犬山君は、傲慢で口汚いトキ課長の罵詈雑言なしでは生きられない体になる。)
その他、コウモリ社員・人喰いグマ社員、自社にも取引先にも不幸をまき散らす黒ネコ社員(怖くて社長もクビに出来ない)など、なんで雇ったか分からん社員が目白押し。
ちなみに「オールマン」連載中。
唐沢漫画にしては、珍しく色男が主人公。
しかしこの血煙今日四郎(ちけむり・きょうしろう)、ピンチになると「まあまあ、ところで可愛いシーズー犬の飼い方を知りたくはないか」とか唐突に言い出して敵を幻惑、そのふった話題に関する的確な蘊蓄を垂れ流しながら鮮やかに敵を斬るという無敵の男。唐沢世界に於ける京極堂と言えよう。言えないか。
無敵で、悪の組織に追われてるんだけど、別に正義でも何でもなく、関わる女と○○しまくったりして、結構鬼畜なんである。
蘊蓄のテーマについては、各回ごとに違っていて、時には語る蘊蓄が2頁見開き(アメーバ〜ヒトに至る生物進化図とか)で繰り広げられるのが素晴らしすぎる。
「くだらなさ+マニアック+ペダンチック」という、固有の作風が結実した傑作。唐沢先生自身も「好きな作品」と語っているらしい。
読者の罵詈雑言をものともせず、月刊マガジンに連載していたギャグ漫画。
そんなわけで、単行本が増刷される見込みは薄いと思われる。っていうか、作者の再登場も危ぶまれる。(←「花鳥風月紆余曲折」で再登場しました。良かった〜)
全3巻であるが、何しろ1巻ずつ装丁が全く違うので、書店で別の棚に並べられていることも多く、全て集めるのが異様に困難という困った本。
読者も大御所も体を張っておちょくっており、私は大好きだった。
当初はドクターと看護婦で「読者の悩みに答える」という体裁だったが、後半そんな設定はどこかに行ってしまった。
第3巻では「美味しんぼ全料理リスト(コメント付き)」「切手漫画」「マグロ漫画」が秀逸。
かつて「MSXマガジン」「ファミ通」に、忘れた頃に連載されていた4コマ。
いつ、どんな仕事をしているのか全く謎な「父さん」が、延々と息子に体を張った嫌がらせをする、というこれまた謎なフォーマット。ある意味「ダメおやじ」の逆パターンか?
いや、もしかしたら、「子供で遊ぶ」というのは、人の親に与えられた数少ない特権の一つなのかもしれない。(吉田戦車の「みっちゃんのママ(注:娘に嘘の知識を信じ込ませるためにはあらゆる手間と散財を惜しまない美人母)のように)
息子の出てこない回では、ひたすら一人でのボケを繰り返している。その「間」が絶妙なんである。
A書店の暴力に屈してヤングチャンピオンに連載された(あとがきマンガ参照)作品、らしい。何があったか心配になるほどお下劣に徹して描かれている。
精力だけは絶倫(しかし妻の誘いは拒み続ける)の主人公おやぢが、若い娘にナニしてもらおうとしてはいつもボコボコにされる、というパターンが繰り返される。
ある回のオープニングのコマでは、既に傷だらけのおやぢが歩いており、「もう既にどこかで何かしてきたようだ」というキャプションが付いており、大いに笑った。
「織田内閣樹立!」から始まる本作。何故現代に?何故信長?どうやって政権を?といった無粋な説明なんか一切ナシの、実に男らしいイントロである。
内閣構成は、総理大臣・織田信長/厚生大臣・徳川家康/大蔵大臣・豊臣秀吉/内閣官房長官・森蘭丸/文化庁長官・千利休。
円高とか、日米関係とか、水不足等の諸問題を、シンプル且つ素っ頓狂な方法で、それでも何とかして(こじつけて)しまう作者の力任せぶりが素敵。しかも案外的確に問題を処理してしまうのが不思議なのだが、信頼できない政治家ばかりのご時世では、妙に彼らが頼もしく見えてしまうのもまた事実!
諸処に出てくる「クリリントン」「リエツィン」とかいった名前の、似てるんだか似てないんだかよく分からない海外の要人たちもまた素敵。
誰がモデルかモロ分かりの漫画家・炎尾燃(ほのお・もゆる)は、スパークする漫画バカである!
そのスパークする日常(フィクション・・・らしい(笑))を赤裸々に描いた一代巨編。
自分の泣ける話を披露した後、女性アシスタントが見事にリテイクした見開き背景に、ホワイト吹きつけ損ねてまたリテイクを出す話。
入れた仕事をすっかり失念し、さんざん身勝手な理屈を振り回してアシスタントに死ぬほどの無理を強いる話。
そして「嵐の転校生(笑)」のアニメ化に際し、デビュー作を見返して悶え、人払いをして熱〜い主題歌を自作自演録音する話など、今や揺るがぬ熱血漫画家の位置を不動のものとした島本先生の、会心の一作。
甲子園に出場できるまでヒゲをそらずに願をかける高校球児の如く、「真実の愛を見つけるまでヒゲをそらない」と決意し、「心が寒い」のでいつ何時でもトレンチコートをまとった女、それが藪内笹子。
キャラの誕生はわりと早く、いろんな雑誌に単発で発表されたシリーズを集め、漸く一巻が出たのであった。
作品の内容は、男性と出会う度に「この人が私の真実の愛」と思いこみ、攻めに出るが相手にされなかったり、愛され(たと誤解したりし)てひげ剃りを買ったが運命のいたずらで別離したり、いつもラストではヒゲをそれずに終わるのである。現在「まんがくらぶ」で、依然として愛を探し続けている。
それにしても、女性も鼻の下に若干産毛はあるけど、あんな風にフサフサになりうるものなんだろうか?という素朴な疑問が浮かぶ。が、どのみち「ヒゲ」と「OL」をくっつけた時点でしりあがり寿の勝利である。
こーんなカルトな漫画(しりあがり寿自体、まだまだコアな漫画読みしか知らないようだし)が、なんの間違いかパフィーに絶賛されたきっかけで大増刷、平積みになったときは、おかしな夢でも見てるのかと思った・・・
笹子もサブキャラもどうにもバカだが、一巻の巻末書き下ろしはなんとももの悲しい。ああいう一瞬の切なさこそが、しりあがり寿の真の魅力だと思っている。
ちょっと手が付けられないほど下世話で下品な作風の、田中圭一の出世作である。
一応、医療機関とそこで働く人々が主人公だが、当然マトモであるわけもない。主人公である秩父山先生、その悪友越谷先生、研修医のケロタン(正味カエル。一応二足歩行をし、人語を解するが、様々なものにすぐに劣情を催す。)が延々と下ネタを炸裂し続け、患者は単なる洒落のために切ったり縫われたり、何かされたりするのである。
「秩父山だっ!」の方は、「ドクター秩父山」の続編。
新キャラとして、美少年イーターのさゆり先生、ちょっと口では言えないところの(作中では言ってるけれども!)形態が他人とは著しく異なる看護婦・あんちょちゃん等が新登場して、下品さに磨きがかかっている。ふう。こちらにはケロタン出ないのが残念だな〜。
田中圭一の作品集。
著者はしばらく漫画家と玩具メーカー社員の二足の草鞋でやっていたが、途中でゲームメーカーに勤務した。
で、製作したゲームがあの「アクアノートの休日2」。
「秩父山」と変わらぬこの下ネタ攻勢に浸ったら、あのゲームを素直に見ることは出来なくなること請け合いだ!
この人の基本スタイルは、一ページ一本(横四コマ、もしくはフリー)なのだが、ギャグ漫画としては凝縮度が高く、作る方は大変だろうと思う。その中で、下ネタのクオリティ(笑)を落とさずに仕上げていってるの流石と言うべきだろう。
松芝電機に勤務する主人公・八神は、課長代理補佐心得(しかし「課長」と呼ばれないと返事をしない。)。
そこはかとなく池上遼一タッチの絵柄で描かれる、4ページの掛け値なしにバカ漫画。
表紙に「この漫画はギャグ漫画です。ビジネス漫画ではありません。」と断ってあるのがなんとも親切。職人芸のネタ展開と”間”は、とても説明できるものではありません。是非ご一読を。
「ミスターマガジン」好評連載中。
「カチョバカ」の野中先生が送る、週間連載作品。(モーニング連載中)
一流の職人を目指す主人公”ヤス”は、日本一のつまようじ溝掘り職人の弟子として、腹筋・座禅・流鏑馬など、つまようじ彫りに何の関係があるかわからん修行に明け暮れ、つまようじの溝の必要性について疑問を抱きながらも奮闘している。(師匠の言うには、つまようじ製作には免許が必要で、教習所もあるらしい。)
現在は、色々あってぬいぐるみ職人(の弟子)としてさらに赤貧の日を送っているようだ・・・
「こ、この羽生生純って漫画家は何者なんじゃあ!この気色悪い絵は何じゃあ!」新連載当時(いや、それからしばらく)、ファミ通読者はそう叫んだ。
一応、この作品には原作者・竹熊健太郎=モテない天才科学者、漫画・羽生生純子=竹熊が相手役として作ったアンドロイド(だが、途中で資金が尽きたため、肝心の下半身が出来ていない)で、なぜか漫画が得意・・・という基本設定はあるが、ひたすらゲームと関係ない暴走と、独特の変な絵柄で連載が進行していく。
担当・国領さんの「頼むからゲームの漫画を描いて下さいよ〜!!」という必死の叫びも空しく、「桃太郎Iinガンジス(桃太郎と三匹のお供・いずれも水死体がひたすらガンジス川を流れていく連作)」やら、「読者から募ったクグロい絵コンテスト(略してグロコン)」やらのネタばかり。たまにファンタジーに行くかと思えば、「歴史的に正しいヨーロッパ中世風ファンタジー=糞尿と疫病あふれる不潔な世界で、魔法が使える主人公は魔女裁判」だし。という、全編バカルン超特急★(原文ママ)な力作。
単行本が出た当初は、この本をレジに持ってく相方を「え〜?こんなの買うの?マジで?」と止めたが、今になって思えば、持っててよかった。
ちなみにこのタイトルは、(仮題)が付いた状態で正式です、ハイ。
スピリッツ誌上で連載されていた、ほりのぶゆきの出世作。「水戸黄門」のようなメジャー作品から、「江戸の黒豹」みたいなマイナー時代劇まで、一流のツッコミ心によるギャグが光る。
心底時代劇が好きで、(再放送までも)しっかり見ている人間しか描けない、タイトなギャグ。私の一押しネタは、わりと初期の一本。
助さん&格さん「控え控え〜い!この方こそ先の副将軍、水戸光圀公にあらせられるぞ!」
町人「(嘲笑しつつ)副ぅ?」・・・・・・・この嘲笑の顔が、またイイのよ。
こちらは「パロ野球ニュース」に連載されていたもの。元ネタとか登場人物がどうにもレトロなのが彼らしい。(まあ、タイトルからして若い者にゃあ分かるめえ。)
出色のネタとしては、「長嶋三世(ルパン三世第一シリーズの予告ナレーションをパロったオープニングが上手い。「元木大介、俺の相棒」ってのが個人的にツボに入りまくり。)」もいいけど、4コマ小ネタも相変わらずタイト。こんな一本が良かった。
(野球帽を買いに行く親子連れ。どこの帽子がいい?と聞く父に対し、)
子供「高橋ユニオンズの帽子じゃなきゃやだ!」(どーゆー子供だ)
店員「高橋はありませんが、トンボなら。」
父親「あるのか!!」
60〜70年代の「少年向けよみもの」風の装丁が素敵(表紙はスーパーひとしくんだけど)。色々な雑誌に掲載された小ネタのパロディヒーロー物を集成したもの。
とにかくタイトル(もしくはヒーローの名称)が笑わせる。中には、本編よりもタイトルの方が笑かす作品もあって困ったもんだ(苦笑)。そのタイトルの数々は、列挙してるとキリがないので、リストを作成しました。見てね★
個人的には「下手人奉行」ってのがツボ。
これまた凝った装丁。表紙は「テレビマガジン」風に、登場するヒーローの絵がちりばめてあり、裏表紙の広告は「渡辺篤史DX」。作品群は「超人読本」と大体同じ感じのパロディヒーロー物。これもリストを作ったので、詳しいタイトル群はそっちを参照して下さい。
実はこれ、一巻目なんだけど、その後書きに「連載が続いていて、雑誌が潰れていなかったら第二巻でお会いしましょう」とあるんだけど、そうこう言ってる間に出版社自体(スコラ)が潰れてしまって(笑)、二巻はどうなるんでしょ?
また、章と章の間に、新聞のTV欄やTV局CMのパロディがあるのも、なかなか「らしく」ていい。
日本(いや、世界)各地の観光客向けの土産物屋にはびこる、貰っても嬉しくない、変すぎる土産物。それが「いやげ物」。
ある時は、海岸地帯に蔓延する、よくわからんメルヘンな貝殻細工。またあるときは、名物の配置が凄すぎる安っぽい掛け軸(命名「ヘンジク」)。誰に買ってもらいたいんだかさっぱり分からん妙な灰皿(命名「ヘンザラ」)。
またあるときは、木魚を抱えて眠る子坊主の飾り物を、各地で何十個も採集、比較する。そしてまた、田舎の土産物屋にトマソンのごとくに生き延びる、とうに去ったブームの形跡を求める。
マイブームの鬼、みうら先生の凄いところは、写真撮ってそれでよし、なんてせずに、どんなアホらしい物件でも、必ず金を出して買って来るって事だ。だって、家に持ち帰らなければ、「土産」ではなく、当然「いやげ物」にはなりようがないのだから。(ま、多分嫁はんにとってはたまったものじゃないだろうけど)
「いやげ物」の怖ろしいところは、地元の人間はさほど「致命的に変」とは認識してないところにあるんじゃないだろうか?と思わされる。
だって、山形の山寺(立石寺)の土産物屋には「芭蕉グッズ」が溢れかえってるけど、それが相当奇妙だとは、いうら先生に「山寺は芭蕉のタレントショップと化していた!」といわれるまで思わなかったもんなあ。
困ったことに看板に偽りなし。
まっすぐしか投げない主人公、それを受ける盲目のキャッチャー、片目のスラッガー、女子部員、敵キャラに至るまで、設定も行動原理もみんなどアホウ。
どちらかといえば、原作者のテイストによるものなのだろうが(原作者の佐々木守氏は、甲子園球場が大阪府にあると思っていたらしいぞ。豪快さん。)、ちょっと泥臭い初期水島新司の絵柄と相まって、まあ濃いこと濃いこと。
お好み焼き屋で読んでいたのだが、「エイリアン」見ながら平気で飯を食う私ですら、あまりの濃さに読み続けることができず、軽い敗北感を覚えた。
まあ、本作の知識は「大甲子園」「一球さん」を楽しむ上で必要なので、この二作を好きな人は読んでみてもいいだろう。
ちなみに、主人公の藤村甲子園(東大卒)は、「大甲子園」では甲子園球場のライン引きを生業としていた。
関係ないけど、ごく初期の水島新司の絵って、ちばてつやそっくりなの。その時期に書いた変な番長まんがが、従兄の本棚にあった。レア物か?
仏物専寺(ぶつぶつせんじ)の住職、雲信は「仏教専門学校(略して「ぶっせん」)を発案し、生徒を募集した。
その「ぶっせん」は単位制の専門学校で、50単位の修得により「悟り」を認定するというどえらいシステムである。
何処か変だが、それなりに「今時の若者」である、一筋縄では行かない生徒(の中には、一応他の寺からのスパイなんかもいるんだけど、連載二回目にしてすっかり使命を忘れている。)を、いかに悟りに導くか?というのがストーリーである。
奇妙な粘度を持つ絵柄と、筆の書き文字が、限りなくいい味を出している。
また、「所詮、生き物は生き延びる為の方法をエクスタシーによって学ぶよう遺伝子に操られているんだよ。とどのつまり「仏性」というのも単なる塩基配列ということになるな。平たくいえばアデニンとチミンとグアニンとシトシンだ(41号、雲信のセリフ)」なんていう、クールなネームもたまらない。
この8月から連載が始まったばかり。・・・続いて欲しい。
安永航一郎のバカ&不謹慎パワーが最も炸裂している!と私は思う。
”マッキンリー飢村””ヨットマン戸塚”から、謎の理事長に至るまで、モデルモロ分かりのキャラクター(多少時事ネタあり)が強引で良い。よく4巻も続けられたもんだ。
主人公・六条ひとまが政府公認の頑丈人間として、謎のスポォツ組織「アナボリック」に潜入する・・・という話のフォーマットはあるが、当初の目的はどうでも良くなっていく。
ツーバイ・フォウというカナダ人IOCエージェントが相棒で、この娘が所構わず脱ぐんだけど、安永航一郎が書くと、どうにもお色気にならないのもご愛敬。
一番のご愛敬は、作中に一回も「スパルタカス」なる単語が出てこない所かな。
「カナダから来たカナダ人!」等々、サブタイトルも素晴らしい。
安永航一郎の初メジャー作品。
県立高校の野球部が、突然「県立高校の生徒が県の平和を守るのは当たり前」という理論に言いくるめられ、防衛する羽目に。悪の秘密結社「電柱組」(普段は材木屋)の繰り出す、どうにも異常で安永な怪人達と戦うのだった。
まあ、ストーリーは、交通事故に遭っただけなのにサイボーグにされたインド人留学生・カーミ・サンチン君の巻き込まれっぷりや、戦慄の「しいたけヨーグルト」等のくっだらない(私にとっては誉め言葉★)ネタで終止するのだった。しかし懐かしいやね。
主人公・酢堂大蔵は、陸軍中野学校への進学夢見て、祖父の作った「陸軍中野予備校」で特殊技能を磨いていた。希望を胸に上京したはいいが、終戦は知っていても中野学校が無くなったことは知らず(ちょっと考えれば分かりそうなものだが)、大ショックを受ける。
やむなく、軍用地に勝手に家を建てていたかつての祖父の部下・旗本家に居候する。
カムフラージュのために高校に通い、偶然再会した予備校の先輩・有川雄妻(オヅマ、と読む)から、日本史の裏で暗躍する「南蛮帝国」(あくまで固有名詞であり、欧州人の総称ではない(笑))の陰謀を知り、特殊技能を発揮して戦うのだ!
とかいっても、その脱力バトルぶりは、「県立」より更に磨きが掛かっている。
忘れられない敵キャラとしては、尾崎三兄弟(ジャンボ尾崎・コンコルド尾崎・ステルス(見えないのだ!)尾崎)や、ナンヤネン教官(その脇の下の匂いにより、ベトナムでは一個大隊が神に召されたという)。
そして、味方も「大怪我の先輩」桜井さんや、酢堂の兄・玉金兄さんなど強烈無比。
中途半端な掲載話数のため、5巻から6巻までの間に5年もの間が開いてしまったのが、本作最大のギャグかもしれない・・・
本屋で「ありますか?」と聞けない本の最右翼。(訊いたところで、きっと店員さんはビニールのかかった本のコーナーに行ってしまうに違いない。)
有能なる若手科学者・菊川肛司(きっかわ・こうじ)は自ら開発したANAL粒子(原子力<Atomic energy>・中性子<Newtron>・そして<And>・磁力線<Lirear>の略・・・何だよ「そして」って・・・・)を偶然肛門の粘膜より吸収したことにより、全身が肛門の粘膜に包まれた超人・アナルマンへと変身(そのプロセスは「肛着」・・・もうどうにでもして。)する。
一応、実の父が創設し、実の兄が引き継いだ組織・「ビッグアヌス」という組織があり、それやら「後方不敗」なるホモ野郎やら、DNA(大腸菌人間エース)やらと戦うのである。はあ。説明しててなんか疲れた。
というわけで、安永航一郎の下品&バカパワーが臨界点に達してしまった怪作。気が付けば二巻がちっとも出ていないんだけど・・・心配だぞ!
学校内で起きる事件を解決し続ける学生刑事、それが主人公・栗巣十春である。
ただし、後継者がいないため、30になった現在でも制服に身を包み、高校生の振りをして任務を遂行しなければいけないのだ!(ちなみに、毎日警察の女子寮から出勤している。)
学生刑事として、素性を隠すため、彼女は「火星人」に変身するのだ!(どうなるかは本編を参照してくれ。くだらないぞ〜)これも露出シーンが多いけど全然色っぽくないのでした。安永的。
主人公・京塚まさ子は性格も頭もいい女子高生。しかし「胸がない」という理由で男子生徒(板東栄二くん)にふられてしまった彼女は、盆地胸に肉まんを詰め、正義の巨乳・巨乳ハンターとして、おごれる巨乳を懲らしめていくのである!といっても、「パイ拓を取る」というその手段でどうやって懲らしめるのか、何回読んでもよく分からない。
相変わらずしょうもないサブタイトルの数々(「黄金バスト」「巨ブラ」「バストレイバー」など。)と、強引な登場人物の名前(黒柳大徹子さん・猫柳るみ子さん等々)がたまらんバカ漫画。ふう。