コミック
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GOD SAVE THE すげこまくん!(全12) 永野のりこ
講談社 ワイドKCヤンマガ 定価515〜533円

〜すげこまくんは、自由に思うままにこういうことしてるつもりでしょ?
  で…でもね 違う。
  あなたちっとも自由じゃないの。〜


 恋愛(特に思春期の・片思いのソレ)というものにおいて、煮詰まってくると時として「相手が何食わぬ顔で勝手に自分を操って、『好きで好きでたまらない状態』にさせている。それなのに普段は全然知らぬ顔で、自分を他の人間と同程度にしか扱ってくれない」という、手前勝手な被害者意識に襲われて、愛しさあまって「お前なんか」な気分になってしまう時がある。あったでしょー(やや不安)?その「操るもの」が人によっては「魅力」と認識されたり、「毒電波」と認識されたりもするのだが。
 新米美人教師・松沢先生が出会った担任クラスの生徒、すげこま君もそんな一人。というか、他のものの認識をほとんどすっ飛ばして、「おまえなんかこーだっ!」な気持ちが先走る不器用な思春期少年。ただ一つ普通と違っていたのは、彼がむやみな科学力と行動力と軍事力(個人所有では世界一位)を有していたこと。超兵器も作ればタイムトラベルもするし、アンドロイドは作り放題、謎の怪獣は呼び出し放題。
 かくして松沢先生は毎回、「拉致されて強制コスプレ」にはじまって、すげこまくんの「先生なんかこうしてやるう!」な暴走に付き合わされるのであった。
 すげこまくんが自分の孤独と先生への思慕に気づくのはいつの日か?エキセントリックな友人達の行く末、松沢先生そっくりに作られ、やがて自我で行動するアンドロイド「M1号」の運命は?そして、法規に照らせば絶対に救われないすげこまくんを、表題どおり神とかそんなアレが救ってくれるのか?
 終わりなき(一応学園ものだが、バレンタインデーは4回くらいあるし)ルーティンスラップスティックに見える本作だが、11〜12巻のクライマックスに至る展開は鳥肌&感涙もの。独特の読み辛さにギブアップする人も多いが、途中で熱ダレせず、是非最後まで読破していただきたい。

 また、意外なキャラクターが「電波オデッセイ」に再登場するし、その後のキャラ類型を把握する上でも読んでおきたい。

 なお、永野作品に「おかっぱ・小柄・ロリ顔・適度にダサい服装・それでいて巨乳」な女性が出てきたら、「マッドメガネ君の手によって拉致&強制コスプレ(ボンデージ系が基調)」はデフォルトなのであらかじめご了承いただきたい。さりげなくこの人、ボンデージ描くの上手いなあ…
 単行本は現在品切れ。特に10〜12巻の発行部数が少ないらしいので、興味があるなら、古本屋で出合ったら即ゲットをオススメしたい。

「ヤングマガジン増刊海賊版」1991.7号〜1992.7号
「週刊ヤングマガジン」1992.51号〜1997.52号連載
1:<1993.1.8>〜12:<1998.3.6>



紺野さんと遊ぼう(全1)
 安田弘之
大田出版 F×COMICS


 紺野さんは、セーラー服が良く似合う地味め美少女(ここでいかにもな美少女にしないのが安田弘之らしい)。
 第1話分こそ、「紺野さんのちょっとした表情の変化と、それぞれの動作の可愛らしさ」を描くものの、段々と、どちらかというと「鉄魂道!」のキャラにふさわしいような天然ぶり(磯の生物を突っつくのが好き、匂いフェチ(墨汁とか灯油とか古いマットとか))がサイレントで展開される。しかし時折、妙にフェティッシュな視線でそこはかとないエロティシズムが漂う感じが危うくてよい。(特に「幻の序章」では全開である)
 どのみち、女性の動作や表情の「一瞬」を切り取る視点の巧みさはさすがに安田弘之のお家芸。

 が、個人的なツボは、各編の合間にはさまれる「微妙にやる気のないコスプレ(本当にやる気なさそうなのだ)」と、巻末の「一撃」。特に後者は不必要なマニアックさが(護身術で銃火器の扱いまでレクチャーされても(笑))たまらん。

「マンガ・エフ」'00年8月〜'01年2月号、「マンガ・エロティクスF」'01年1.2号、春の号連載
<2001.5.7>