<み>


水に犬-DOG IN THE POOL- 村上もとか
講談社 モーニングKC 全1 本体¥505

〜この国で警官として正義を通そうとするなんざ、
 この大きな泥の川を渡りきろうとしているヤセ犬みたいなもんだ。
 途中で多少の泥水飲んだってマイペンライ(気にしない)!オレだってタイ人だ!〜



 ワッサン大佐。チェンマイのスラム出身にして、名門タマサート大学卒業。現在、CSD(タイ内務省警察局中央犯罪捜査部)の第7課ボス。日本人妻と娘一人。女にはちょっと弱くて食いしん坊。
 豊かな観光資源と自然、そして美味を誇るタイは、経済発展の裏側で、麻薬・汚職・エイズ禍に苦しんでいる。凶悪犯罪と、時には身内の腐敗にまで日々切り込むワッサンの活躍を描く佳作。
 正義を貫き、悪を許さないワッサンだが、決して真正面から正義ばかりを通すのでなく、時には「濁」の部分も併せ呑む度量と融通が大きな魅力となっている。

 作中によく登場する「マイペンライ」は、「Take it easy」「No problem」にあたるタイ語。タイ人ののんびり・鷹揚な気質をよく表すと言われる語である。
 一編に一回はワッサンが料理を貪るシーンが出てくるが、これがまた美味しそうで、それを汗をたらしつつ堪能する姿がたまらない。辛党だったら食欲を刺激されること請け合いである。
 また風景も描き込まれており、表舞台だけでなくスラムや山間部の村・歓楽街などまで筆者がしっかり取材してきたことが伝わってくる。

週刊モーニング '93年 48〜50号,'94年 39,40号、 '95年 39〜41号掲載
1995.11.22初版