<コミック>
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- *「濃爆おたく先生」 1 徳光康之
講談社・マガジンZKC(<1>2000.12.22) 本体¥552
- 転任教師として颯爽登場した主人公、その名も「暴尾亜空(あばおあくう)」。
………残念ながら、ここで何らかの反応を示した人でなくては、3分の1も楽しめない漫画である。
仮にもメジャー系統誌で何たる暴挙!と思われるかもしれないが、デビュー当時からこの人の漫画はそんなのばっかり。だから好きだ。
漫画やアニメ、映画を愛する人間なら、誰しも「俺がこのチームの一員だったら」「私が●●様の側近だったらこんなエピソードに」と熱く妄想し、自分に都合のいいエピソードの1つや2つや6つや7つを綴りだしたことがあるだろう。あるはずだ。正直になれ。
そして、根も葉もないバーチャル妄想で、現実の脳内麻薬物質をドバドバ出したことがあるはずだ。
そんな貴方(特にジオニスト)に是非お勧めしたい一冊。
普通の授業は一切行わず、受験生相手にジオニスト妄想を熱く語る暴尾。だって彼の免許科目は「ガンダム」だから。
コアなオタクならではの濃厚で爆発力のある妄想で、時には生徒に感涙させ、新たな価値観(笑)を啓蒙する暴尾。その行く手に毎回立ちはだかる、主義を異にする刺客達との戦い(でも正座して妄想を語り合うだけ)が続いていくのであった。
ガンダムシリーズにある程度通じた人(若くても、「ジオンの系譜」などをプレイしていれば多分大丈夫)なら、間違いなくそこそこ楽しめる。が、前述したとおり「ネタの知識」がないと色々苦しい。
かく言う私も、後半の「サクラ大戦」ネタは正直きつかった。
ガンダム好き、ドム好き、サクラ大戦(特にマリア)好きの人ならば最高に楽しめるはずだ。
それにしても、この教師になんだかんだ言って付き合ってやっているここの学校の生徒は、みんなイイ奴だなあ(笑)…
(「マガジンZ」連載)
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- ノリ・メ・タンゲレ(全1) 道原かつみ(原案:麻城ゆう)
徳間書店 アニメージュコミックス(1984.6.10)
〜イエスの時代に存在するはずのない十三番目の人間
ユダの代わりにシモン・ペテロがイエスを裏切ることになるな。〜
銀河暦497年という未来。
人類は、大脳工学の発達により記憶・計算・分析などあらゆる脳の力を最大限に発揮できるようになっていた。
また、自分と極めて近い遺伝子を持つ過去の人間にシンクロすることで、短期的に過去にさかのぼって体験することが可能にもなっていた。
和合率の高い人間に「乗り移って」過去を検証する「航時局員」であるヴェアダルに指令が下った。
航時学者シグマ・サイは、「歴史にはある程度の流動性がある」という従来の航時理論を批判、「過去は変幻自在に変えることができる」という自らの主張を実証するため、違法に過去に遡り過去を変えてみせると挑戦状を叩きつけてきた。
彼が向かったのは5000年前、そして彼と驚異的に高い和合率を持ち、乗り移られた男はイエス・キリスト。
シグマは、未来人の能力を発揮して人々を簡単に暗示にかけ、「奇跡」を見せ続けていた。
聖書どおりの行動をなぞりながら、どこかで歴史をずらそうと企てる彼を監視し、計画を阻むため、ヴェアダルが派遣される。
ヴェアダルと和合率が高いのは使徒、シモン・ペテロ。
弟子としてイエスと行動を共にするヴェアダルだが、彼の体験する歴史は、帳尻こそ聖書と同じだが、実情は相当異なっていた。
特に「裏切り者」であるはずの少年ユダの心情と行動は…
イエスの死と復活の真相、そして未来人には不合理すぎる「神」の存在とは何か?練りこまれたシナリオが見事。
道原かつみの絵はあまり華麗ではない時期で、時折白さを感じる画面もあるが、特に違和感はなく、読みやすい。
表題は、聖書のヨハネ第20章にある「私に触ってはいけない」の意。このセリフの真意はラストで明かされる。
「リュウ」'83.9月号〜'84.5月号掲載