- ジェントル萬 新谷かおる
スコラ バーガーSC 全4 本体¥500(絶版)
〜冗談だろ!F1なんざ、ガキの遊びさ。〜
- 300km/hが巡航速度。世界最速にしてもっとも野蛮、もっともマッチョなモータースポーツ・インディCART。
主人公の八百 萬(やお まん)はインディの弱小チームに属する凄腕ドライバー。またもう一つの顔は、日本最大コンツェルン・八尾財閥の御曹司。父であり仙台当主の故・八百千蔵が世界を旅しながら多くの女性と関係を持ったため、世界中に100をゆうに越える異母兄弟がいる。チームクルーのさよりもその一人。
突然チームがイギリスの大手銀行・ハート銀行に買収される。目的はF1参戦。そしてそのオーナー・冴子もまた千蔵の娘だという。異母妹にに異母姉・それに異母弟のバーニーをセカンドドライバーに迎え、F1に乗り出すハートチームだが、冷酷な冴子の心中は依然として測り難く…
熱いレース展開に、萬の出生の秘密や兄弟探し、孤児モニカの姉探しなどの謎が絡んで展開していく。
1990年代前半の第2次F1ブームの時に、あえてインディという選択が渋い。蘊蓄語りの上手さはさすが新谷かおるらしく、F1とインディのレギュレーションやルール等の違いの解説が随所に組み込まれている。
また、フィッティバルディ・セナ・プロスト・マンセル…などの実名ドライバーが登場するのも珍しい。萬との会話やレース展開に絡むのがなかなか面白い。
ストーリーは後半がバタバタと慌ただしく終わっている感は否めないが、何とかケリはつけている感じ。
F1編が長く、その後が短いのであまりインディを走っているシーンが多くないのが残念。
同時期の「エラン」にも登場する柳氏が、チーム監督(元ホンダの秘蔵っ子という設定)として登場する。
絵柄も丁寧で崩れのない時期なので、安心して読める一編。スコラ・コミックバーガー連載
<1:1991.12.16><2:1992.6.16><3:1993.1.16><4:1994.8.19>
しゃぼてん(全1) 野中英次
講談社 モーニングKC 本体¥419 <2001.4.23>
〜ここだけの話だが、俺はハチミツの中を上手く泳ぐ方法を知っている…〜
- 野中英次お得意の、4P一本のギャグシリーズ。
特に各話に共通したキャラクターはなく、話毎の関連もない。一話一話をキャラに頼らずアイディアを効かせて、軽快に描いている。勿論バカさは相変わらずなのでご安心を。
こうして純粋にギャグだけを味わってみると、意外に律儀に一話ごと「オチ」を大事に付けているのが分かる。実は今時 貴重なオーソドックスなギャグ漫画家と言えるのではないだろうか。
お勧めは「証明」、「親友」。
- 「モーニング新マグナム増刊」2000年13〜16号、「週刊モーニング」2000年41号〜2001年15号連載
- 人造人間キカイダー 石ノ森章太郎
秋田書店 サンデーコミックス(全6)/朝日ソノラマ サンワイドコミックス(全3)<絶版>/扶桑社豪華版
〜やつは…あれで完全なんだよ!……”人間”に近いという点ではな!!〜
- 息子を陰謀で失った光明寺博士は、「死なない息子」を求めて人造人間・ジローを作り上げる。息子の正義の気持ちを受け継がせるために取り付けた「良心回路(ジェミニイ)」。それがジローの長い悲劇の始まりだった。
悪の組織・ダークにさらわれた光明寺博士を追うジロー。それはまた、不完全な良心回路を修復するための旅でもあった。
ハカイダーをはじめ、「兄弟」であるダークロボットとの戦いの中で、揺れ動く善悪、なまじ人間に近いがために苦しむジロー。
人間の不安定な主観でしかない「善悪」。だが、善も悪も所詮は人間の産みだしたもの。様々な形で「害悪」を産み続ける人間。
ならば人間の中に果たして「良心」はあるのか?完全な「善悪」の判断はあるのか?
ジローが人間を知ろうとし、人間に近づこうとする度に苦しみと矛盾が募っていく…
見事に描ききられたマージナルなキャラクターの葛藤が、見る者に多くの命題を突きつける、今なお色あせない名作。特撮TV版とは違い、敵とのバトルよりもアイデンティティ模索と人間の本質に迫る濃厚なドラマが展開されている。特にラストシーンの結句(冒頭に続くピノキオの寓意)は見事としか言いようがない。
2000年に、原作のテイストを活かしたアニメ版(全13話)が製作された。更に強めたドラマ性だけでなく、デザインの面までパーフェクトなアニメ化は一見の価値有り。
- 「少年サンデー」 1972.7月号〜1974.3月号連載