〔ハードボイルド編〕

あなたがもっている物を、それを必要としている人に売るのはビジネスではない。あなたが持っていない物を、それを必要としない人に売るのがビジネスである。
「ユダヤ格言集」
 
私はマルクス主義者ではない。
マルクス
 
民主主義とは人民の人民による人民のための脅しにすぎない。
オスカー・ワイルド「社会主義下の人間の魂」
 
坊や!“罪”を犯すにも、才能と努力がいるのよ!
坊やに“罪”の矜持(ほこり)があるなら・・・“罰”を受けてみる・・・?
荻原玲二「Good Bad Mama」/羽澄揺子
 
いまこそおれはさびしくない
たったひとりで生きて行く
こんなきままなたましひと
たれがいっしょに行けようか
宮沢賢治「小岩井農場 パート四」
 
約束を守る最上の手段は、決して約束をしないことである。
ナポレオン
 
真の男性は二つのものを求める。危険と遊戯である。だからかれは女性を、もっとも危険な玩具として、求める。
ニーチェ「ツァラトゥストゥラはこう語った」

未だかつて、現在の中で、自分は本当に幸福だと感じた人間は一人もいなかった、----もしそんなのがいたとしたら、多分酔っぱらってでもいたのだろう。

ショーペンハウエル「自殺について」
 
老人は眠ることが少ないが、ながく生命と連れ添ったために、死を思わせるような何ものとも交わりたくないと思うのであろうか。
ハーマン・メルヴィル「白鯨」
 
独りで行く方がよい。孤独(ひとり)で歩め。悪いことをするな。求めるところは少なくあれ--林の中にいる象のように。
「ブッダのことば」より
 
男はしばしば一人になりたいと思う、女も一人になりたいと思う、そしてその二人が愛し合っているときは、そういう思いを互いに嫉妬するものだ。
アーネスト・ヘミングウェイ「武器よさらば」
 
これ、何ともかっこいいと思いません?あえて「恋愛」でなくこっちに入れてみました。
 
なるほど、神はある種の快楽を禁じておいでになる。しかし、神と折り合いをつける道がないわけじゃありません。
モリエール「タルチュフ」
 
MIRACLE,n.【奇跡】
自然界の理法にもとる説明しがたい行為とか出来事で、例えばキング4枚にエース1枚の普通の手を、エース4枚キング1枚でやっつけること。
 
アンブローズ・ビアス「悪魔の辞典」
 
 漫然と読んでたら何が皮肉か分からないぞ(笑)!
 
そっちがそう来るなら、こっちにも考えがあるぜ。マリリン・モンローとハンフリー・ボガードのファンだったが・・・今日限りだ!!
「ルパン対複製人間」/次元大介
 FBIにとっ捕まって、この啖呵。粋だ、粋すぎる。このセリフを、結構ムキになって喋っているのがまたいい。
 「余裕」こそ、ハードボイルドの条件でしょ。
 
(「それなら、”しちゃいけない”の集大成を作るんじゃなく、誰かが”こうすればいい”ってお手本を示せばいいじゃないの!」という言葉を受けて)
いたよ、そういう人。アドルフ・ヒトラーっていうヒゲのおじさん。
三原順「はみだしっ子」/グレアム
 三原順は、こういう皮肉の効いたネームを書かせたら天下一品だった。急逝が悔やまれる。
 ちなみにこのグレアム、ひねくれた13歳のガキですが、まあ色々事情があるので気にしないで下さい・・・
 
「重いな。これは何だ。」
「夢のかたまりさ。」
ジョン・ヒューストン「マルタの鷹」
 このやりとりもカッコいい。
 こんな短い会話で、「夢」というものをポジティブに捕らえない男の姿勢が、さらっと表現されてるわけで。
 
ここは確かに宇宙戦艦の中だが、戦艦であると同時にわれわれの家だ。(中略)家の中にいてまでかしこまっていては何もできまい?本艦の鉄則は、やるべき時にだけやるべきことをやればいいのだ。あとは寝ていようと起きていようと私生活は自由だ。
松本零士「宇宙海賊キャプテンハーロック」/ハーロック
 ハーロックが、アルカディア号の生活について語るシーン。オン・オフを区切る、やるべき時にはやる、あとは自由・・・それを「節制」という。勿論、そんな言葉が口から出ないからこそ、彼らはかっこいい。
思い出は俺の心にしまっておく。ここが一番安全だ。
同上
俺は墓を暴くようなことはしない。たとえ許しがたい敵だとしても、使命の為に倒れた者には最大の敬意を表する。俺も信念のおもむくままに死にたい。
同上
 やっぱり「ハーロック」はこの手のセリフのザクザク宝庫だ。

我の神なるやも知れぬ冬の鳩を撃ちて硝煙あげつつ帰る
寺山修司「空には本」
麻薬中毒重婚浮浪不法所持サイコロ賭博われのブルース
寺山修司「血と麦」
 寺山修司初期短歌ならではのバイオレンスが漂う作品。
 初めて読んだときには、短歌でこんな表現が出来ることに戦慄した。
 
悪魔でも聖書を引くことができる、身勝手な目的にな。
シェイクスピア「ヴェニスの証人」
 このカテゴリにシェイクスピアを引き出してくる人も、あまりいないんでしょうが・・・
 
 
俺は部下の二階級特進なんてごめんだぞ。
ゆうきまさみ「機動警察パトレイバー」/後藤隊長
 この人のひょうひょうとしたニヒルさがなければ、この名作の魅力も半減していたことだろう。
 ここでは、怪我をした部下に向かって「念のため病院へ行け」と言ってるシーンなんですが、警察や軍隊で、殉職したら階級特進となる制度を知っていないと意味が分からないセリフ。要するに「大事に至ると困るからな」の意。テクニカルタームを差し込んで、特に説明しないのもハードボイルドの要素でしょ。
 同時に「深刻な怪我だったらどうする」と普通にやっても、深みも何も無いわけで、ここは作者のネーム勝ち。
 
こうやるから退治ってんだよ。
望月三起也「ワイルド7」/飛葉大陸
 逮捕、起訴のプロセスを飛ばして、悪党は「潰す」。
 その設定だけでも十分魅力的な、「ワイルド」第1話の名セリフ。
 
そうだ・・・強敵と飲む酒は一番うまいものだというからな!
松本零士「宇宙海賊キャプテンハーロック」/ハーロック
 
酒。これもまたハードボイルドに欠かせませんな。これは、それに「敵」まで入っちゃってます。痺れます。
 
周りを気にして生きるよりゃ一人で/勝手気ままにグラスでも決めてるほうがいいのさ/それでも群がって生きてるよりゃましさ/ふざけるんじゃねえよ 動物じゃねえんだぜ
頭脳警察「ふざけるんじゃねえよ」(「頭脳警察セカンド」所収)
 ありがちなロックの歌詞?これが30年近く前に歌われた歌でも?
 日本語によるパンクロックの祖にして金字塔、頭脳警察。その歌詞もサウンドも、今聴いてもトンガリっぷりが十分にかっこいい。ちなみにグラスとは大麻のこと。
 
・俺は誰のことも誘惑せぬ。真理でやるのは別だ。あの木は知恵の木ではなかったか?
 生命の木はまだ豊かに果実をつけてはいなかったか?
 俺はお前の母親に、あの果実をとってはいけぬと命じたか?
 無心なものは無心なために好奇心を持つが、
 そういうものの手の届くところに
 俺は禁断のものをわざわざ植えるようなことをやったか?
 俺はお前たちを神のようにしてやりたかったのだ。
 ところがお前たちを付きだした「あいつ」は、
 「汝ら生命の果実を食らいてわれらの如き神となるべからず」
 というまさにその理由によって、お前たちを突きだしたのだ。
バイロン「カイン」/ルシファー
 
 
ルシファー;「破壊者」にたずねてみるんだな。
カイン:それは誰のことですか?
ルシファー;「造り手」のことだ。お前の好きなどんな名前で呼んでもいいが。あいつは破壊するためにだけ創造するんだ。
同上
 
カイン;あなたが人間に善をなすことができるなら、なぜそうしないのです?
ルシファー;それでは人間を造ったあいつはなぜやらんのだ?俺はお前たちを造りはせぬ。
       お前達は「あいつ」が造ったのだ。俺が造ったものじゃないぞ。
同上
 あの〜、クリスチャンの方すいません。
 しかしながら、「神」はおろか、自分の他は何も頼らないのが真のハードボイルド。この戯曲自体は尻切れトンボな印象ですが、バイロンのアンチキリスト(勿論当時は徹底的に叩かれた)な筆の冴えをどうぞ。
 
人のために死ぬなんて まっぴらごめんさ/だから 銃を取れ
頭脳警察「銃を取って叫べ」(「頭脳警察セカンド」所収)
 二つのフレーズが、パラドキシカルに繋がっていて、何気ないけど格好いい。