とりあえず、カストリ雑誌並の連載にはなりました。

相方のスポーツ観戦道

第3回:第46回有馬記念・・・2001.12.23

 そうですか、江田照男ですか、そうですか。何の話かといえば、もちろん今年の有馬記念。テイエムオペラオーやメイショウドトウなどの引退レース、「その年の有馬記念に出走して花を添えていた」という評価で終わるはずの馬だった江田照男騎乗のアメリカンボスが、見事に2着に突っ込んできたことです。2chの競馬板でも、「アレは買えねーyo」とかいわれてましたね。1着マンハッタンカフェ、2着アメリカンボス。「テロ馬券」だの「コーヒー馬券」だのというやっかみも聞こえておりますが、それはそれとして。

 やはり、江田照男です。江田といえば万馬券、万馬券といえば江田。穴党にとって神のごとき存在、それが江田照男騎手です。江田騎手のすごさはこうです。万馬券というものは、力の劣るとされる馬が一世一代の好走をしたときに発生するものです。しかも、単勝万馬券というのはめったに出ない。多くの場合連勝複式(それも馬連)馬券です。だとすると、彼が騎乗する馬だけが好走したところで万馬券にはならないということになります(ここら辺、競馬を知らない方には分からない話になってますね、ごめんなさい)。今回の有馬記念では有力馬(マンハッタンカフェ)の2着ですので、彼の騎乗がよかったですむ話ですが、江田騎手の場合、「彼が有力馬に騎乗し、比較劣位の馬を連れてくる」ことが(他の騎手に比べて)異常に多い。この辺の話は、例えば『別冊宝島518競馬騎手名鑑』あたりで詳しく述べられていますので、そちらをご参照ください。これってやっぱり、才能なんでしょうかね〜。

 競馬の騎手って、武豊騎手のような一部のトップジョッキーを除くと、世間的な知名度はきわめて低いですよね。その武騎手にしたところで、スポーツ紙ならばともかく、一般紙のスポーツ欄では顔写真はおろかコメントすら掲載されないのが現状ではないでしょうか。しかし、彼らも一流プロスポーツ選手、一流の騎乗技術を持ち、独自の得意技を持つ人たちです。それも、「人様の財布の中身を決める」ギャンブルレーサーです。どんなに勝ち目の薄いレースにも最大限の力を発揮しようとしています。よく競馬は「馬7分、人3分」といわれますが、わたしは、そんな単純な足し算ではないんじゃないかと思ってます(じゃあ、お前の考える比率を言ってみろといわれると答えに窮しますが)。競馬に限らず、どんなスポーツ界にも一流選手がいて、世間の耳目を集めていようといまいと全力でプレーしている。それが、私がスポーツ全般に関心をもっている理由です。ま、これはスポーツに限ったことではないですが。

 アメリカンボスの好走は、トゥザビクトリー騎乗の武騎手が絶妙のペースを作ったからだといわれてるようです。私もそのとおりだと思います。えっ、私は馬券獲ったかって?残念ながら、私普段は馬券買える環境にないんです・・・。

第2回:2001 K−1GRAND−PRIX・・・2001.12.8

 やってくれましたね、マーク=ハント。予選の時は単なる“(一発の)パンチは強いけど、とてつもない打たれ強さだけで勝ち上がった男”であった彼が、今回はずいぶんと戦略家に変身しておりました。具体的には、本日初戦のジェロム=レ=バンナ戦で、「前回と同じ、“肉を切らせて骨を断つ”戦法だよ〜ん」と思わせといて、実はきっちりカウンターを狙っていたあたりです。バンナも多分、ハントのことを前回と変わらぬ「打たれ強い」だけで「テクニックとは無縁」の男なのだと思っていたのでしょう。

 ご存知の方には申すまでもないことですが、K−1ルールでは、「とりあえず立っていればチャンスはある」という不文律があります。今回のトーナメントでも、せっかく勝利を収めながら怪我のために棄権せざるを得なかったアーネスト=ホーストをはじめ、過去にも数多くの棄権選手を輩出(?)してきました。そんな中ハントは、自分の打たれ強さに絶対の信頼を置きつつも、常に必倒の右ストレートを当てるタイミングを見計らって試合をしておりました。すなわち、“打たれ強さ”を“不気味さ”に、“コンビネーションの下手さ”を“俺は常に一発狙ってるもんねぇ〜という圧力”に変換していたのです。相手は嫌ですよねぇ〜、いくら打っても敵の顔色が変わらない。逆に、敵の攻撃は結構効く。けしてディフェンスの上手い選手じゃないんです、ハントは。それどころか、むしろ下手。それなのに、どんなに打たれても“普通の”顔してリングに立っている。次第に、自分の攻撃力に自分でクエスチョン=マークをつけてしまう。まさにアリジゴク的な状況です。

 来年のK−1がまた面白くなりそうです。今大会最大のダークホースが優勝してしまった。この事実を、我々は絶対に記憶にとどめるべきです。

 個人的には,アレクセイ=イグナチョフに楽しませてもらいました。あの長い足が繰り出す膝蹴りは、一見の価値アリです。次のテレビ登場に期待。

第1回:2001 MLB WORLD SERIES・・・2001.11.5

 今年のワールドシリーズが終わりました。結果は4勝3敗でアリゾナ・ダイヤモンドバックスがワールドチャンピオンに。ダイヤモンドバックスというチーム名は、手元の英和辞典(旺文社ロイヤル英和辞典)によると、「菱紋がらがらへび」のことなんだそうな。へぇ〜。いかにもアリゾナって感じですな。

 さてこのシリーズは、「悲劇に見舞われたニューヨーク市民を勇気付けるべく、“正義の味方”“ハート・オブ・アメリカ”ヤンキースが立ち上がる」てなあんばいのストーリー作りが事前になされていました。私は、プロスポーツである限りこの手のギミックは大歓迎です。ちょうどアメリカン・リーグのリーグチャンピオンシップ開幕直前に、誰かが「マリナーズの勝利を祈っているのはシアトル市民だけで、残りのアメリカ国民はみんなヤンキースを応援してる」といった趣旨の発言をしてましたが(マーティ・キーナート氏だっけ?)、まさにそんな感じだったんでしょうね、現地は。あくまで想像でしかないですけど、でも実際、レギュラーシーズン終盤にニューヨーク・メッツが優勝戦線に絡んできたときの盛り上がりったらなかったですもんね。

 プロスポーツにおけるギミックとは、観戦者に対して一層の観戦の喜びを与えてくれるスパイスであると思います。因縁・判官びいき・友情・社会情勢などなど、ありとあらゆることがギミックのネタになります。これらの提供されるギミックに対して、われわれ観戦者が素直に乗るもよし、反発するもまたよし。もちろん、お金を取ってプレーを見せる以上、実現しうる最高のプレーを提供することがプロとしての最低限のことであるわけですが、今年のワールドシリーズはその意味でも大満足といえるでしょう。

 日本においてこの手のストーリー作りが最もうまくいった例としては、阪神淡路大震災に見舞われた神戸に本拠地を置くオリックス・ブルーウェイヴが、「がんばろう神戸」を合言葉に日本一になったことが挙げられるでしょう。選手一人一人がどれほどこのことを念頭においていたかはこの際問題ではありません。見ている者をハッピーな気分にしてくれたということが大事なのだと思います。それこそが、プロスポーツの存在意義なのだと思うわけです。今度新たに監督に就任した石毛氏は、「もう『がんばろう神戸』じゃない。これからは『熱くなろうぜ神戸』ですよ」と言っているようです。来年のブルーウェイヴにはちょっと注目です。

 ワールドシリーズのMVPは、ランディ・ジョンソン、カート・シリング両投手が選出されました。MVPを2人受賞というのも、いかにもアメリカ的な粋な計らいといえるでしょう。2人の活躍により上記のストーリーは未完に終わりましたが、それでも、プロの凄みを見せ付けてくれたこの2人もまた、本来“正義の味方”に立ちふさがる悪役的役どころとなるはずのところを、そういったことを一切感じさせない超一流のプロスポーツ選手でした。

BACK TO THE TOP