無用知識袋・子の巻
- 1.「婚」
- 「婚」と言う字は、「女」に「昏(くらい)」と書く。
これはかつて、中国で嫁入りの儀式は夕刻以降に行うという慣習があったことに由来する。
- 2.「果物」と「菓子」
- 元来、「くさかんむり」の付く「菓子」は「くだもの」の意味であった。
昔、甘味料は非常に希少で、くだものの甘味は何よりのご馳走だったのだが、いつしか「くさかんむり」のない「果」が「くだもの」、「くさかんむり」のある「菓」が「粉や甘味料を用いた嗜好品」の意に入れ替わったのは不思議である。
- 3.不肖
- 「不肖」とは「似ていない」の意。
つまり「ひとかどの人物である父には似ても似つかない無能な私」という謙遜の言葉であり、自称するのは構わないが、父が息子を「不肖の息子」と呼ぶのは本来おかしい用法である。
- 4.鬼
- 中国で「鬼」と言えば「死んだ者の霊魂」を意味する。
いわゆる日本風の「鬼」を連想すると伝奇小説の味わいが随分違ってきてしまう。
- 5.美味なるもの
- 古来中国では美味の最高峰として羊肉が珍重されていた。
だから「美」という字の上半分には「羊」がいる。
- 6.サラリー
- 「サラリーマン」の「サラリー」は、給与・報酬を意味する言葉だが、これはもともとラテン語で塩を示す「ソル」から転じたもの。昔、労働者への支給物が貨幣でなく貴重品である塩だったことに由来する。
また、「サラダ」の語源も同じ「ソル」である。「野菜に塩をふって食べる料理」の意味合いだと言われている。
- 7.萩焼の切れ込み
- 萩焼の食器には必ず、底にV字の切り込みが入っている。
もともと萩焼は幕府や藩主に納めるため作られたものであり、下々の者が使うことは不敬なこととされていた。そこでわざと底に切り込みを入れて焼き、「傷物だから使ってもよい」ことにして、あらゆる階層から愛用されたという。
- 8.狼狽
- 古説では、「狼」は前足が長く、後ろ足が短い。また「狽」は逆に前足が短く、後ろ足が長い。両者は前後にくっついて歩くことでバランスをとって歩けるとされていた。この2つが離れて、うまく動けずにあわてふためく様子から「狼狽」という言葉が生まれた。
- 9.ビクターの犬
- ビクターの登録商標のあの犬には「ニッパー」という名前がある。
イギリスの画家・フランシス・バラウドの作品「His master’s voice」からの意匠。
ニッパーはバラウドの亡き兄が飼っていた犬だったが、レコードに吹き込まれた兄の声が流れる蓄音機に耳を傾けるその健気な仕草にバラウドが感動して描いた作品である。
- 10.マツダ真空管
- 戦前・戦後に照明やラジオに使われたマツダ真空管ランプというものがあった。
この命名は、エジソンがゾロアスター教の光の神「アフラマヅダ」にちなんで付けたものであり、日本の「松田」姓とは一切関わりがない。
- 11.ジプシー
- ジプシーは長い間「エジプト由来の民族」だと思われていたため、「エジプト」の音からそう呼ばれていた。
現在では言語体系などに基づく研究から、インド語族に繋がる民族だと判明している。
- 12.麒麟
- 聖人が現れたときに出現すると言われる聖獣だが、古くは一つがいと考えられていた。すなわち麒が牡、麟が牝だと言われる。これは鳳凰も同じで、「鳳が牡、凰が牝」と「説文解字」にもある。
なお、「ジラフ」はその姿が麒麟に似ているというので現在は「キリン」と呼ばれている。
- 13.瓜と爪
- うっかり書き間違いやすい漢字の一つ。昔から伝わる覚え方として、下の払い上げる点を「ツメ」に見立て「瓜に爪あり、爪に爪なし」と言った。
- 14.岸田姉妹
- 「アルプスの少女ハイジ」や「赤毛のアン」の作詞をした詩人・岸田衿子は岸田今日子の姉。かつて谷川俊太郎と結婚していたが、のちに離婚した。
- 15.ブリジストン
- タイヤメーカー・ブリジストンの社名は、創業者石橋氏の名前をそのまま英語にしたもの。「ブリッジ」+「ストーン」である。
- 16.中国の太陽神話
- 太古、中国では太陽は10個あったと伝えられる。一日一個ずつ太陽が昇り、それを一日と数え、10個が順番にそれを繰り返した。現在でも「上旬・下旬」などと、10日を「旬」とひとまとめにして考えるのはその名残である。太陽にはそれぞれ烏が住んでいると言われた。
堯の治世、10個の太陽がいっぺんに出現するという異常事態が起こり、人々は灼熱地獄に苦しんだ。そこで帝は弓の名人に命じて9個の太陽の中にいる烏を射落とさせた。そんなわけで現在では太陽が1個しかないのである。
- 17.〒
- 郵便番号を表す「〒」マークは、「逓信」の「テ」の字をデザインしたものだと言われている。
- 18.三越のマーク
- 三越百貨店の(越)マークをよく見ると、「筆のハネ」の部分がそれぞれ3本・7本・5本になっているのが分かる。これは「七五三」の隠れた縁起担ぎである。
- 19.ありんす言葉
- 歌舞伎などで、江戸遊女の「〜でありんす」という口調をよく耳にする。
これは、地方出身者が多かった彼女らが、訛りを隠すために使った独特のものだったらしい。
- 20.日ペンの美子ちゃん
- 販促マンガの雄・ 「日ペンの美子ちゃん」は現在までに3回作者が変わり、代替わりしている。初代の作者「矢吹れい子」は、漫画家・中山星香の別名。
- 21.デンセンマン
- 「見ごろ!食べごろ!笑いごろ!」の人気キャラクター・デンセンマンのデザインは石ノ森章太郎の手によるもの。
また、コスチュームの中に入るのは複数人が担当したが、その中には現在「オフィス北野」社長である森氏もいた。
- 22.鴨なんばん
- 「なんばん」の由来は、ネギ。
かつて大阪の難波がネギの産地であったことから、「なんば」→「なんばん」となったもの。
- 23.無炭酸
- 創業初期、コカコーラは濃縮シロップを水で割って客に供されていた。
ある日、ボーイが間違って炭酸水で割ったものを客に出してしまったがこれが受け、炭酸で割られる今の形になった。
- 24.双六(すごろく)
- 双六は、平安時代には婦女子の趣味として大々的に普及した。この双六は、現在のようなゴールを目指すボードゲームではなく、バックギャモンによく似たゲームである。サイコロを二つ使うことから「双六」の名が付いた。
- 25.オーストラリアの首都
- シドニーと思いこんでいる人も多いようだが、キャンベラである。これは首都選定の際、候補に挙がったシドニーとメルボルンの間で決着が付かず、折衷案として中間地点を首都としたから。キャンベラは当時は農場だった。オーストラリアの地名はイギリスの人名・地名が多いが、これはアボリジニの言葉で「集会場」を表す地名。
- 26.最古のタクシーメーター
- 古代ギリシアのへロンは、歯車を用いた優れた距離計を考案した。当時旅客運送や物資輸送のメインであった馬車の車輪の回転を利用している。
- 27.イモリとヤモリの区別法
- イモリが両棲類、ヤモリが爬虫類である。
姿が似ているので紛らわしいが、「イモリ=井守」で、井戸にいるということは水を必要とするから両棲類、かたや「ヤモリ=家守」は水場のない家の中でも生きられるから爬虫類、という覚え方がある。
- 28.死刑の時期
- 中国では、死刑はまとめて秋に行った。秋は五行では衰亡の方位であり、この時期以外に死刑を行うことは、世界の健全なエネルギーの運行を妨げるものだと考えられていたからである。治安・思想等の面で特別に危険と判断した場合のみ、時期を問わずに死刑を行った。
- 29.桃太郎の家来
- 桃太郎の家来は言わずと知れた猿・キジ・犬だが、これは十二支の「申・酉・戌」。方位では水平方向で「鬼」門(北東=丑寅)に対峙している。彼らが鬼退治するのも道理というわけ。しかしこの方位は秋=衰亡の方位であるから、パワーを補充してやる必要がある。それゆえのきび団子。
- 30.カンコー学生服
- 同商標は、以前は「菅公学生服」。勿論、流罪の末に祟り神として祀られ、後に学問の神様として天神信仰を集めた菅原道真にあやかった名前である。地方では今でもこの商標のブリキ看板にお目にかかる。