無用知識袋・寅の巻
- 60.ホモ牛乳
- 一瞬ドキッとする商品名だが、この「ホモ」とは「単一」「均一」を表し、「均質化された牛乳」の意。元来の牛乳は脂肪の粒の大きさが不揃いで、成分が分離し、瓶やパックに脂肪が付着しやすいす。そこで脂肪の粒を砕き、大きさを揃える均質化(ホモゲナイズ)の処理によって、飲みやすくしたもの。一時期商標名として使われたが、現在の市販牛乳は大概この加工を行っているので、特に名乗らなくなったようである。
最近では自然志向に合わせて、均質化を行わず牛乳本来の味を追求した「ノンホモ牛乳」という商品もある。
- 61.ラクロス
- 90年代に日本でも流行したスポーツ「ラクロス」は、ネイティブアメリカン発祥の競技。
元来は、部族・集落同志の争いや訴訟事の勝敗を遺恨や犠牲なく決めるため、戦争の代わりとして行われたものである。
- 62.ブールハーフェ
- 18世紀の著名な医師であり科学者でもあるブールハーフェ(1668〜1738)は、世界で最初に病床での医学教育を始めたと言われている。
その名声は、中国からの手紙が「ヨーロッパ、ブールハーフェ様」というアバウトすぎる宛名できちんと届いたという逸話があるほど。
- 63.杉田玄白
- 「ターヘルアナトミア」執筆で知られる著名な蘭学医。本名は「杉田翼」。
「玄白」の「玄」は「医者(黒衣を着ていることから)」、「白」は「素人」のことで、「やぶ医者」「もぐり医者」を指す言葉である。
- 64.ズボン
- 語源はフランス語の「ジュポン(jupon)」。
フランス語の意味は、「ペチコート」なのだが、それがどうして男性用の二股外衣を指すようになったかは不詳。何らかの混同があったかと思われる。
- 65.ゴッド・セイブ・ザ・クイーン
- 言わずと知れたイギリス国歌。名曲であるが作詞・作曲者は不明。18世紀初め頃制定された。
本来の詩は「ゴッド・セイブ・ザ・キング」で、女王治世下では「キング」の部分が「クイーン」に置き換えられて歌われる。
- 66.床屋の回転広告
- あの青・赤・白の三色はそれぞれ静脈・動脈・神経を表している。
ヨーロッパの理髪師はカミソリを使って神や髭を剃るだけでなく、腫れ物の切除、瀉血(「血液が増えすぎると万病の元になる」という古典医学の教えに従い、定期的に血を出してやる医療行為)等の外科的医療行為を受け持っていたことにちなむ。時には軍医として戦争に同行することもあった。
しかし中世ではこの技術は高く評価されず、学問を修めて現場医療にあまり携わらない医師の方が尊敬を集めた。医師の衣服は長袖で、裾も地面に突くほど長いものを着用していたが、これは「滅多に手を使わない」ことを表し、理髪師に対する優越を示したものである。
- 67.タンスの単位
- 「一竿・二竿」と数えることは割合よく知られている。
昔、タンスや長持を運ぶときには、上部に横棒を渡し、二人以上で運搬した。この横棒を「竿」と読んだためにこう数えた。
- 68.牡牛
- 英語では「ox」と「bull」二通りの名称がある。
前者は去勢した牡牛、後者は去勢していない牡牛を特に指したもの。
- 69.幻のファンタ
- 昭和50〜53年の限定された時期に発売された「ゴールデンアップル」という種類がある。これには人工着色料が添加されていない。
- 70.宗左近
- 現代詩を代表し、また超絶校歌制作者としても知られる「宗左近」先生のペンネームは、太平洋戦争従軍中に死線を彷徨った際に口をついて出た「そうさ、こん畜生」に由来する。
- 71.お転婆
- 語源はオランダ語の「オンテンバール(ontembaar)=慣らすことの出来ない、負けん気の」という語。
異説としては、元気によく跳ね回る「御伝馬」にちなむとも、女子が早足に歩く「テバテバ」という擬態語にちなむとも。
- 72.ミイラ
- ポルトガル語「mirre」による。オランダ語では「mummie」で、「木乃伊」と漢字を当てるのはその漢訳である。
ミイラそのものの他に、死体に詰めた防腐剤、樹脂も「ミイラ」と呼ばれ、後に人間やミイラから生成された薬品と混同され、万病に効くと信じられた。
「ミイラ取りがミイラになる」という言葉は浄瑠璃などにも登場するが、実際に薬用にするためにミイラを取りに行く者は実在したようである。
- 73.ミイラ(2)
- 江戸時代、外国人が競って日本で買い求めたものに「人魚のミイラ」がある。これは実は小猿と鯉をつなぎ合わせてミイラ風に干した奇怪なものだが、高い人気を集め、幕末期には一大輸出国となるほどなった。細工が精巧で、上半身と下半身の継ぎ目を巧妙に隠したため、「ホンモノ」の太鼓判を押した博物学者もいるほど。
しかし、最初に医薬品として「人魚の骨」という怪しげなモノを持ち込んだのは、他ならぬ外国人であった。江戸時代、下血止めの特効薬として売りつけたらしい。
- 74.あこぎ
- 「阿漕が浦」は禁漁地だが、とある漁師が何度捕まっても平気な顔で密漁を続けたことから、「しつこく、図々しい様」の代名詞になったと言われる。
- 75.カボチャ
- 江戸時代、中国〜九州ルートで日本に広まった。
語源は「カンボジア」。カンボジア原産だと思われていたため付いた名前。植物学的にルーツをたどると、原産はアメリカ大陸である。
- 76.穴開きチーズ
- 「トムとジェリー」に出てくる美味しそうな穴開きチーズの種類はスイス産の「エメンタールチーズ」。あの穴はプロピオン酸菌の発酵によって自然に生まれる。チーズフォンデュに使われるチーズとしても有名。
- 77.ペコちゃん
- 昭和25年以来、日本の傑作キャラクターとして知らない人はいないペコちゃんの年齢設定は「6歳」。
名前の由来は「子牛」を示す方言「べこ」から。「ミルキー」→牛乳→牛の連想か。
ちなみに店頭用のスリーサイズは58・55・63cm。
- 78.ポコちゃん
- ペコちゃんのパートナーだが、今ひとつ影が薄い(?)ポコちゃんは、ペコちゃんより1歳年上の7歳。室町時代に「子ども」を表した「ぼこ」という語に由来した名前。
- 79.マラリア
- マラリア原虫によって感染する「マラリア」は、イタリア語で「悪い空気」の意。
当時は、沼やドブ川などに沈殿したゴミや木の葉が腐って出すガスが病気の原因だと考えられていたためこの名が付いた。
- 80.金鍔(きんつば)
- 和菓子の「きんつば」は、餡をまとめ、溶いた小麦粉で包み焼いたもの。刀の鍔(つば)に似せて平たく作ったのでこの名が付いた。
小麦粉の代わりに米の粉を使った菓子もあり、皮が白みをおびるので「銀鍔」と呼ばれる。
- 81.牛乳石鹸
- 牛乳石鹸の牛のマークは、「商いは牛のごとし(堅実に、ねばり強く前進せよという格言)」という社訓にちなみデザインされた。昭和4年の箱絵では、ホルスタイン牛の乳房から牛乳が流れているインパクトある絵柄が用いられ、数回モデルチェンジされているが、赤字に白のカラーリングは変わらない。
- 82.くしゃみ
- 昔、「くしゃみをすると早死にする」という俗信があり、その時すかさず「くさめ」という呪文を唱えれば厄を防げると考えられていた。その「くさめ」が次第にくしゃみという行為自体を指すようになり、音が変化したものである。
「くさめ」という呪文は、「休息命(くそくみょう)」の急呼とも言われる。
- 83.京
- 「京」という字の原義は、「とても大きい」「とても多い」様子を指す。
「皇帝の住む場所」は大きい町で、人も沢山いるので「京」と呼ばれ、とてつもなく大きい魚という意味で「鯨」という字が出来た。
また、「兆」の次の単位に用いられるのも同じ理由から。
- 84.お中元
- 盆の季節の贈答品を「お中元」というが、これは中国の道教の節日「中元」にちなむ。
元来、「上元(旧1月15日)」「中元(旧7月15日)」「下元(旧10月15日)」の3つで1セットの祭日だが、仏教の「盂蘭盆会」と同じ日なので混同された。儒者はこの日の墓参には否定的だったが、民衆には広く受け入れられ、結局盆の墓参や供物を、仏教側からは「盂蘭盆」、道教側からは「中元」と見る理解が定着した。
現在の贈答習慣は、先祖への供物が変化したものか。
- 85.マスとヤマメ
- 大きさが全く違うが、同じ魚。
一生を川で過ごすのがヤマメで、水生昆虫などを主食にするので魚体は小さいままだが、マスは海に出て栄養価の高い小魚などを食べるため大きくなる。見た目はマスの方が圧倒的に強そうだが、実は海に出ていくのは川での生存競争に敗れたためだとされており、全く見かけによらない。
- 86.爆竹
- その名の通り、昔は竹そのものを火の中に投げ入れた。焼ける際に弾ける大音量で、悪鬼と邪気を払う祭祀用具。
中国では元日に悪鬼祓いのために用いた。竹の代わりに火薬花火が用いられるようになったのは宋代から。
各地中華街でもおなじみの風景だが、本家の中国では1994年に北京市、広州市で禁止令が出されてしまった。以前は国営工場で品質されていた爆竹が、生産自由化されたことで粗悪品が出回り、火事やケガが相次いだせいだとされる。
- 87.お屠蘇
- 正月に飲む「おとそ」は、「屠蘇散(屠蘇延命散ともいう)」を浸した酒・もしくは味醂を用いるのが正式。
「屠蘇散」は名医華陀が処方したと言われる薬草のミックスで、文献によれば「赤朮・桂心・防風・蜀椒・桔梗・大黄・烏頭・赤小豆」だそうだが、現在用いられているものには大黄・烏頭は入っていない。邪気を払い、寿命を延ばすと言われた薬。
正月が近づけば、薬局や気の利いた酒屋などで入手可能。
とはいえ、中国ではこの「屠蘇散」を使う風習は途絶え、日本に残るのみとなっているようだ。
- 88.ピアノ
- ピアノの正式名は「ピアノフォルテ」。音楽の強弱記号で「弱く、強く」の意。それまでの鍵盤楽器(ハープシコード、オルガン、チェレスタ)などは仕掛けが大きいため、音の強弱が付けにくかった。鍵盤を叩く力の調整一つで小さな音も強い音も出せるピアノの登場は画期的であり、その長所がそのまま名前になった。
ちなみに登場は18世紀、ドイツにて。
- 89.ガッツ
- 「根性、勇気」を示す「gut(s)」の第一義は「腸、はらわた、内臓」のこと。
ちなみに昔は羊の腸で作った弦が、バイオリンなどの楽器やラケットの網、釣り糸などに用いられた。今でもテニス、バドミントンで用いる「ガット」という言葉も「内臓」の意から来ている。
- 90.虎の巻
- 中国の古典的な兵法書に「六韜(りくとう)」という書物がある。この中の「虎韜巻(ことうかん)」には特に秘伝の内容が書かれていたとされることから、「秘伝書」、のちに「種本」「アンチョコ」の意味で使われるようになった。
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