無用知識袋・辰の巻

121.馬鹿
「馬鹿」という名の動物は中国に実在する。角を削って生薬(鹿茸)にする梅鹿(メイルー)という鹿の仲間で、一回り身体が大きい鹿である。読み方は「マールー」。
 鹿茸は疲労回復の妙薬とされ、中国の重要な輸出品。
122.給食
 学校給食が始まったのは明治22年、山形県鶴岡市においてである。
123.水を吐くライオン
 太陽が獅子座に入ったときに、シリウス星が日の出直前に地平線に現れる。これを「ヘリアカル・ライジング」というが、この現象が起こる日は同時にナイル川の増水が始まる日でもある。故に、獅子座とナイル川増水の連想から「水を吐く獅子」という意匠が生まれた。
 現在温泉や噴水でよく見られる意匠であるが、もっとも多く用いられたのはプトレマイオス朝エジプトである。
124.ルビ
 イギリスで5.5ポイントに相当する活字の大きさを「ルビー」(宝石のrubyと同じ綴り)と呼ぶ。
 日本でよく使われる5号活字のふりがなには7号活字を用いていたが、その7号活字の大きさがルビー活字と大体同じ大きさだったことから、現在の「ルビ」という呼称が出来た。
125.レーダー
 レーダー(radar)は「Radio etecting nd anging」の略語から生まれた造語である。
126.グラフ
 方程式に定義を当てはめたときの値を書き出し、いわゆる「方程式のグラフ」を始めて作ったのはデカルトである。
127.ヤカン
漢字では「薬灌」と書く。その名の通り、漢方薬を煎じるために考え出された形状のもの。当初は、薬効成分に影響を及ぼさないように、鉄ではなく銅などが用いられていた。
128.ウィスキー
 「wisky」と「wiskey」の二つのスペルがあり、どちらも間違いではない。一般にアメリカのバーボン系のラベルに書かれているのが後者。
 これは、開拓時代には酒は貴重品であり、鍵(key)のかかる箱に入れて厳重保管されていたからだと言われている。
129.四十九日法要
 現在の日本の法要は、室町時代に成立した「中陰」の理念に基づいている。
 人間の死後、来世までの間には四十九日の審議期間があり、七日ごとに一回、計七回の審理を七人の裁判から受け、その結果で転生する世界が決められる、というもの。担当裁判官は
 初七日=秦広王、二七日=初江王、三七日=宋帝王、四七日=五官王、五七日=閻魔王、六七日=変生王、七七日=泰山王となっている。四十九日目に裁判が終わる(これが「満中陰」)ので、この日に四十九日の法要を行う。
 この考え方は、日本独自のもので、仏教の教義に添う思想ではない。特に、生前念仏を唱えることで極楽浄土行きが確定しているはずの浄土宗・浄土真宗では中陰に基づいて法要を行うこと自体が矛盾しているのである。
130.一周忌、三回忌
 しかし129にはまだ続きがあり、中陰の裁判で地獄や餓鬼界に落ちた人のための救済裁判として行われるのが百箇日、一周忌、三回忌であり、遺族が使者のために充分な施しをしていれば人間界以上に転生できる・・・という、寺に都合のいい思想であり、現在では十三回忌、三十三回忌・・・と増えているのはご存じの通り。
131.イヤミ
 赤塚不二夫「おそ松くん」の名キャラクター、イヤミのモデルは当時赤塚氏を担当していた編集者。キャラクター通り、海外かぶれで特にフランス・ヨーロッパに凄まじく傾倒していたところを面白く思い、キャラクター化したもの。NHKでドラマ化された自伝では、松尾貴史が好演した。
132.祇園精舎
 平家物語の冒頭部であまりにも有名だが、インド(かつてのコーサラ国の首都・舎衛城)に実在した施設。しかしそこには鐘はなかったと言われている。
 ちなみに「精舎」とは、雨季のために旅の修行が出来なくなった僧侶達が集まって修行を行う場所のこと。
133.クリスマス
 日本で始めてクリスマスが祝われたのは、東京の銀座、明治八年に創立された原女学校においてである。
134.マシュマロ
 元来は「marshmallow(ウスベニタチアオイ)」の子の風味をつけていたことからこの名前が付いた。
 日本で最初にマシュマロを製造、紹介したのが森永製菓。同社の有名なエンゼルマークは、当初マシュマロ(「エンジェルフード」という別名がある)を主力商品にしたことにちなんでいる。
135.新田次郎
 小説「強力伝」等で知られる新田次郎は、本名を藤原寛人といい、富士山山頂レーダー計画の実現に尽力した気象庁職員(「プロジェクトX」一話でも取り上げられた)である。ちなみに夫人は小説家の藤原てい女史。
136.ギヤマン
 江戸時代にガラス器を指していった言葉だが、この語自体はダイヤモンド(ラテン語系で「ディアマンテ」、「ギヤマン」はオランダ語)を意味する。
 ガラスのカット加工、研磨はダイヤモンドで行うのは当時も現在も同じ。当時、ダイヤモンドを使ってガラス器の表面に模様を浅く彫り込む「ギヤマン彫り」という製品が人気で多く出回っていた。その辺りから「ガラス」と研磨機である「ギヤマン」が混同されたらしい。
137.ゼブラ
 文具メーカー「ゼブラ」はシマウマのこと。
 シマウマを漢字で書くと「斑馬」、「斑」の漢字を分解すると「文」と「王」で出来ている。「文具界の王」を目指してこの字に掛け、社名としたとのこと。
138.鶏
 英語では、雌鶏が「hen」、雄鶏が「cock」だが、「cock」には男性器を示す隠語があるためあまり使われず、もっぱら「rooster」の方が用いられる。
 ちなみに「chicken」は「ひな鶏」のこと。
139.カーネルサンダース(2)
 店頭のカーネルサンダース像の両手はフレンドリーな感じでこちらを向いているが、あの手は本来チキンの入った「バーレル」を持っているのが正式。
140.ワクチン
 インフルエンザワクチンは、あらかじめ流行するタイプの風邪を予測して生産され、各地の病院に配置される。予測が外れたときは廃棄処分となり非効率的だが、流行してから生産したのでは間に合わないので仕方がない。
141.ダスキン
 ダスキンの社名は、「ダストクロス(英語で雑巾のこと)」+「雑」から。
142.朝鮮人参
 生薬としてもっとも有名な朝鮮人参の根は、一年ごとに枝分かれしていくので形状を見れば何年ものか分かる。
 また、土の栄養分を驚異的に吸収するので、二年ものなら二年、三年ものなら三年、人参を育てた年数だけ畑を休ませてやらないと土が使いものにならないほど。
143.ゲラ
 現在でも校正刷りを「ゲラ」と呼び、「ゲラチェック」のように使う。
 語源は、組み終わった活字の版を一時保管しておく浅い箱、「gallet(ガレット)」から来ている。組んだばかりでまだ構成が入っていない状態から現在の用法になった。
144.ドサ回り
 「ドサ」とは江戸の博徒の符丁で「佐渡」のこと(音をひっくり返したもの)。佐渡島は有名な流刑地で、過酷な環境で知られたことから、「ドサ」が辺境の地、しょぼくれた田舎を意味するようになった。
145.大仏
 奈良の大仏は毘廬紗那(びるしゃな)仏(密教の大日如来と同一視される世界全ての真理を統合する仏)、鎌倉の大仏は阿弥陀仏(西方・極楽浄土の教主。浄土宗で崇めるのはこれのみ)。
 よって、与謝野晶子の「鎌倉や 御仏なれど 釈迦牟二は 美男におわす 夏木立かな」は誤りということになる。
146.妹尾河童
 小説家の妹尾河童の本来の名前は「肇(はじめ)」だが、あだ名の「河童」で改名を申請、受理されたために現在では戸籍上の本名となっている。
 なお、ベストセラーとなった「少年H」は、「肇」のイニシャルから。
147.アキレス
 現在では「アキレス腱」や靴メーカーの名前に生きている「アキレス」の語源は、ギリシャ神話に登場する英雄「アキレウス」。
 母親であるニンフのテティスは我が子が不死になるように冥界の川の水に浸した。しかし踵から足首を掴んでいたためにそこだけが水に浸からず、唯一にして最大の弱点となった。彼はトロイア戦争で活躍するも、敵方のパリスの矢から踵を撃ち抜かれて死んでしまう。これが「弱点・難点」の意味で用いられる「アキレス腱」の由来である。
148.桃屋
 「桃屋」の商品についている桃マークは創業以来マイナーチェンジを重ねて続いているが、マークをよく見ると大きな桃の下に、小さく矢の図案がある。「桃矢」=「桃屋」の洒落である。
149.桃屋(2)
 桃屋のCMと言えば、三木のり平氏がずっと声の出演をつとめた、メガネをかけたキャラクターに尽きる。
 実はあのキャラクターは、三木のり平のファンだった先代社長が楽屋を訪れたときに、のり平師匠が社長にプレゼントした色紙があり、そこに描き添えてくれたイラストをそのままキャラクターにしたもの。
150.ペーパードリップ
 以前はコーヒー抽出と言えばネルドリップかサイフォン式しかなかった。とある主婦が、もっと手軽にドリップできないかと濾紙を使って試行錯誤し、現在のペーパードリップ方式を発明した。現在もトップメーカーである「メリタ」の名に残る「メリタ夫人」がその人である。ちなみにドリッパーの穴の数と直径が特許。