*社会人編*

夏休みはとかく気持ちが緩みがちになるもの事件

<ねらい>
 抑え目の表現、丁寧な文体の中に託された作者の怒りを読みとりましょう。 

 車でホテルに行った場合、大抵はキーをフロントに預けますな。これは泊まる客と出立する客の折り合いがいいように、ホテル側で車を動かす場合が多いからです。
 その時もそうでした。
 某高校の有志学習合宿で、生徒を連れて「ホテル樹●」へ。講義も終わり、夕食前の生徒の自習時間。部屋で一息入れていたら、

 「大道寺先生の車、ホテルの人が運転していて、壁にぶつかったそうです。とりあえず駐車場まで来て下さい」との知らせ。
 とんでもないことではあるが、まあバンパーへこんだくらいだろう・・・と色々考えながら下に降りる。んが。

 車、壁にめりこんでます。
 ボンネット、「めきょっ」とめくれ上がってます。フレーム、イってます。
 壁、ドカンと割れた上に、窓枠もひしゃげてます。

 これは、「車壁にぶつかった」のではなく、「車壁にぶつかっていった」、もしくは「突撃」と言うのです。
 しかもその理由は、ホテルのおっさんが「アクセルとブレーキ間違えて踏み込んじゃった、
てへっ。」という、とっても分かりやすいものだったのですから驚きですね。
 ぶつかった壁の真上が自習室。ぶつかったときにはかなりの音がしたのでしょう、生徒達が窓に鈴なりになって下を見ています。私は力無い声で「見世物じゃないぞ」と言ってはみましたが、まあ、見世物ですな。

 まさか走行できないほどブッ壊されたとは夢にも思いませんでした。当然あっち持ちで修理して貰うとして、最終日に用意された代車が、明らかに18年くらい前のボロアルトなのには更に納得行かないものを感じました。
 ロックのボタンが、「指で押したり引いたりするピン状のやつ」です。乗ると、「小さい頃に中で遊んだ、廃車同然のおじさんの家の古い自動車」の臭いがします。思わず子供の頃に戻りそうです。クーラーのスイッチを入れるとニオイはさらに濃厚になります。車を壊された上にこんな目に会うとは、世の中理不尽すぎます。

 この事件に関わりがあるかどうか、その翌年の2年生学習合宿ではこの「●林」を使わなかったそうです。
 
当たり前です。