ダイヤモンドコミクス(コダマプレス)初出リスト
[注]1966〜1967年にコダマプレスより出版された新書版漫画単行本レーベルについてのリストです。
・ダイヤモンド社から発行された「ダイヤモンドコミックス」(赤塚不二夫「孫子」など)
・松文館から発行されている「ダイヤモンドコミックス」(BL系)
とは無関係ですので、検索等でいらっしゃった方はご注意ください。
ここでは、帯等のロゴ表示に従い、「ダイヤモンドコミクス」と表記します。
同レーベルについてはかなり詳細なリストが存在しています。このリストはそれに作品ごとの初出をできるだけ付記したものですが、その部分についてのみ暫定版ですのであくまで参考程度にとどめおきください。
*凡例はこちらです。
タイトル | 著者 | 巻 | No | 初版日 | 初出 | 掲載期間 | 初出出版元 | 備考 |
ロック冒険記 | 手塚治虫 | 1 | 1 | 1966/05/10 | 少年クラブ | 1952〜1954 | 講談社 | |
2 | 9 | 1966/08/10 | ||||||
真田剣流 | 白土三平 | 1 | 2 | 1966/05/10 | 貸本「真田剣流」 | 1961〜1962 | 東邦漫画出版社 | 第1部 |
2 | 10 | 1966/06/15 | ||||||
3 | 13 | 1966/06/30 | 少年ブック | 1964〜1965 | 集英社 | 第2部 (段組変更・リライト) |
||
忍法屁話 | 水木しげる | 3 | 1966/05/10 | 貸本「忍法秘話(8)」 | 1964 | 加藤書店 | ||
チビ太くん | 赤塚不二夫 | 4 | 1966/05/10 | おもしろブック | 1966〜1969 | 集英社 | ||
オンボロ人生 | 加藤芳郎 | 5 | 1966/05/10 | サンデー毎日 | 1958〜1959頃 | 毎日新聞社 | ||
コーフン☆カンゲキ全集 | 鈴木義司 | 6 | 1966/05/10 | ? | ? | ? | ||
せっかちネエヤ | 富永一朗 | 7 | 1966/06/10 | ? | ? | ? | 1968ドラマ化 | |
OH!大先輩 | 小島功 | 8 | 1966/06/10 | ? | ? | ? | ||
ピンカラキリちゃん | 坂みのる | 11 | 1966/06/15 | 週刊漫画TIMES | 1963〜1964頃 | 芳文社 | ||
2 | 27 | 1966/09/10 | ||||||
まかせて長太 | 赤塚不二夫 | 12 | 1966/06/15 | 少年 | 1963〜1965 | 光文社 | ||
ベビーギャング | 岡部冬彦 | 15 | 1966/06/30 | 週刊文春/漫画読本 | 1956〜1961頃? | 文藝春秋社 | ||
スカタンco.[カンパニー]とランチ君 | サトウサンペイ | 16 | 1966/06/30 | サンデー毎日 | 1967〜1973頃 | 毎日新聞社 | スカタンco. | |
平凡パンチ | 1965〜1968頃 | 平凡出版 | ランチ君 | |||||
墓場の鬼太郎 | 水木しげる | 17 | 1966/07/05 | ガロ | 1966〜1969 | 青林堂 | 貸本リメイク版 | |
ミュータント・サブ | 石森章太郎 | 14 | 1966/07/10 | 少年サンデー増刊 | 1965 | 小学館 | 「少女」掲載分含まず | |
週刊少年サンデー | 1965〜1966 | |||||||
2 | 50 | 1967/05/10 | ぼくら | 1966 | 講談社 | |||
冒険王 | 1966 | 秋田書店 | ||||||
シルバークロス | 藤子不二雄 | 19 | 1966/07/25 | 少年 | 1960〜1963 | 光文社 | ||
アトミックのおぼん | 杉浦幸雄 | 20 | 1966/07/25 | 漫画サンデー | 1947〜1963頃 | 実業之日本社 | ||
ろくさん天国 | 馬場のぼる | 21 | 1966/07/25 | 週刊漫画TIMES | 1963〜1964頃 | 芳文社 | ||
オジサマ大名 | 加藤芳郎 | 22 | 1966/08/05 | ? | ? | ? | ||
イッポン男子 | 佐藤六朗 | 24 | 1966/08/10 | ? | ? | ? | ||
赤いトナカイ | 石森章太郎 | 26 | 1966/09/10 | 中1コース | 1962〜1963 | 学習研究社 | ||
俺はジャマスケ | 鈴木義司 | 28 | 1966/09/10 | 週刊平凡 | 〜1967頃 | 平凡出版 | ||
幽霊船 | 石森章太郎 | 29 | 1966/09/10 | 少年 | 1957〜1958 | 光文社 | ||
剣風記 | 白土三平 | 23 | 1966/09/30 | 貸本単行本 | 1961 | 東邦漫画出版社 | ||
新選組 | 手塚治虫 | 25 | 1966/10/01 | 少年ブック | 1963 | 集英社 | ||
アンドロイド・ピニ | 桑田次郎 | 30 | 1966/10/30 | 日刊スポーツタイムス | 1965 | ? | (*注2) | |
アッちゃん | 岡部冬彦 | 31 | 1966/10/30 | 週刊朝日 | 1956〜1968 | 朝日新聞社 | ||
ミステリー・カクテル | 改田昌直 | 32 | 1966/10/30 | ? | ? | ? | ||
ピコ | 富永一朗 | 33 | 1966/10/30 | 週刊女性 | 1967 | 主婦と生活社 | ||
武芸紀行 | さいとう・たかを | 上 | 36 | 1966/11/05 | 貸本単行本 | 1962 | さいとうプロ | |
中 | 38 | 1966/12/05 | ||||||
下 | 40 | 1967/01/10 | ||||||
ハチのす大将 | ちばてつや | 上 | 35 | 1966/11/30 | 週刊少年マガジン | 1963 | 講談社 | |
下 | 37 | |||||||
大平原児 黒い黒い谷 | 川崎のぼる | 39 | 1966/12/05 | 少年ブック | 1963〜1965 | 集英社 | ||
2 | 51 | 1967/06/15 | ||||||
赤目 | 白土三平 | 34 | 1966/12/25 | 貸本単行本 | 1961 | ひばり書房 | ||
ストップ!にいちゃん | 関谷ひさし | 41 | 1967/01/10 | 少年 | 1962〜1968 | 光文社 | ||
忍者旋風 風魔忍風伝 | 白土三平 | 1 | 42 | 1967/01/10 | 貸本「忍者旋風」3〜6号 | 1959〜1960 | 東邦漫画出版社 | 原稿紛失分をトレース |
2 | 43 | 1967/02/15 | ||||||
3 | 46 | 1967/03/15 | ||||||
4 | 48 | 1967/05/10 | ||||||
アリンコの歌 | ちばてつや | 1 | 44 | 1967/02/10 | 週刊少女フレンド | 1966 | 講談社 | |
2 | 47 | 1967/03/15 | ||||||
3 | 49 | 1967/04/10 | ||||||
罪と罰 | 手塚治虫 | 18 | 発行なし | 単行本 | 1953 | 東考堂 | 「新選組」帯に刊行告知のみあり(*注1) | |
勇者ダン | 手塚治虫 | 45 | 発行なし | 週刊少年サンデー | 1962 | 小学館 | ||
1967年5月 コダマプレス倒産 |
*このリストは、初版発行日データをキーにして昇順に並べたものです。シリーズナンバー順ではありません。
(同発行日の場合はシリーズナンバーの昇順で並べています。)
*1作品をひとまとまりと扱っていますので、複数巻にわたるシリーズは、1巻目の初版日を作品全体のリリース日として並べています。
*価格はいずれも240円均一
*注1:
「罪と罰」「勇者ダン」については、「刊行予定があって告知も出されたが、刊行はされていない」という見解が一般的です。(手塚プロの公式サイトにも刊行記録はありません)「新撰組」の帯に2作品の告知が出ているので、ほぼこれで間違いないだろうと考えられています。
*注2:
「日刊スポーツタイムス」については、似た名前のスポーツ新聞が色々あってどれなのかよくわからない。東京タイムスが発行していたものか?(現存せず)
<参考>
現在では消滅した新聞も多いが、その代表格ともいえる東京タイムスは昭和21年2/6に岡村二一によって創刊、昭和34年10月から夕刊を発行、昭和36年5/1からはスポーツタイムスも発刊、昭和38年2/1に夕刊東京タイムスとスポーツタイムスを合併させた。昭和46年11月からタブロイド紙となり、12月からは夕刊ニッポンを発刊した。東京タイムスの休刊は平成4年である。
(「誰か昭和を想わざる メディアの興亡」より)
●その他、ハードカバーで出版された「愛蔵版」
(新書版・函つき)
ロック冒険記 | 手塚治虫 | 1 | 1967/02/10 | 少年クラブ | 1952〜1954 | 講談社 | |
2 | 1967/02/10 | ||||||
新選組 | 手塚治虫 | 1967/02/10 | 少年ブック | 1963 | 集英社 | 4?0円 |
・No
ダイヤモンドコミクスは背表紙側カバーに「No.*」という形の通しナンバーが付けてあります。その番号です。
・初版日
奥付記載の発行日です。西暦で表示しています。
「漫画書影アーカイブズ」様のリストデータを利用させていただきました。上記のナンバーデータも同様です。
・初出
作品が掲載された雑誌名・および形態について、調査して分かった範囲内で記載しています。
掲載誌が複数にわたる場合はフォローし切れていないものも多いです。
複数掲載の場合は段を分割して表示していますが、表示の切れ目が巻の切れ目に対応しているわけではなく、あくまで便宜的なものです。
いずれにしろ参考程度にご利用ください。
?表記のものは調査中です。
・掲載期間
初出誌での掲載・連載の年度を分かった範囲で記載しています。
ダイヤモンドコミクスは刊行時期が短いこともあって、長編の一部(最初の方)しか収録していない作品も多くあるのですが、掲載期間は基本的にその作品の最初〜連載終了までを記載しています。そのため、収録部分と連載期間は一致しておりません。
富永一朗などの大人漫画(特に一般週刊誌連載)については特に資料が少なく、掲載を確認できた時期だけを記載するにとどまりました。
特に、「〜頃」と書いてある項目については、相当アバウトだと考えてください。
何度か別項で触れたように、このダイヤモンドコミクスが、現在分かっている限り一番最初に、漫画の「新書版コミックス」を世に放ったレーベルです。
それは、それまでの「書き下ろしベースの貸本単行本or赤本」「連載されて人気を博してもまず単行本の形にならないコミック雑誌掲載作品」という形から、「雑誌に掲載された作品を単行本にまとめて出版する」という、今日のコミック流通の基本となる流れを作り出す歴史的な1ページでした。
刊行開始は1966年5月10日で、リリース第一号の作品群は以下の通りでした。
・ロック冒険記(全2) 手塚治虫
・真田剣流(全3) 白土三平
・忍法屁話 水木しげる
・チビ太くん 赤塚不二夫
・オンボロ人生 加藤芳郎
・コーフン☆カンゲキ全集 鈴木義司
これを眺めてみますと、トキワ荘系2作品・貸本/ガロ系2作品・大人漫画系2作品ということで、手塚・石森作品の印象がわりと強いレーベルなのですが、意外にバランスよく各方面を網羅しているのが見て取れます。
刊行数が少ないので、どうしても「広く浅く」「どっちつかず」に見えてしまうのですが、まだまだ「マンガは子供の読むシロモノ」という意識の高かった時代に目指した方向性としてはとても面白く思えます。
少年誌系の初出が目立つものの、帯(上掲の帯画像はさいとう・たかをの「武芸紀行」のものです)に「ヤング・サラリーマンの新しいアイドル…」と記されており、小中学生よりは明らかに高校生以上〜若い社会人の層・つまり貸本や月刊漫画誌、少年誌を読んで育った世代にターゲットを置いていることがうかがえます。手塚・石森作品のチョイスなどもやや渋めのように感じられます。
ラインナップでも特徴的なのは、富永一朗・加藤芳郎・鈴木義司・小島功といった「大人マンガ」の旗手の作品が目立つことです。
現在の私たちが考えるよりも想定読者層はアダルト寄りだったのかもしれません。
ストーリー漫画や子供マンガに較べて、早いスパンで消費され、かつコレクションの対象にもなりづらかった一般週刊誌や新聞での掲載が多いのが大人マンガの特徴です。その上、ルポルタージュ記事や小説に比べて、添え物的に軽視されがちなこともあり、なかなか書誌的にまとまったデータを探すのが大変でした。「初出誌が分かっただけでも御の字」というレベルでして、かなり不明部分を残した結果となってしまいました。
今回、初出を調査するにあたって、ネットオークションの週刊誌目次画像なども、眼を皿のようにして当たってみたのですが、やはり扱いが小さい上に、「まんが」とひとからげにされて作者名だけの記載(タイトルなし)だったり、それどころか単にページが載っているだけ(著者名すらない)のものもあり、思うような結果が得られなかったのは残念でした。
また、大人マンガの場合、まとまった期間連載していても、分量が少ないので単行本1冊分に満たないため、連載タイトルとは違うタイトルを単行本に付けることもあるので尚更難しいものがありました。
当時大人マンガは掲載媒体が手広いので認知度が高い反面、作品としてなかなか評価やセールス(少なくとも大ヒット)に結びつきづらいものだったと言われています(何しろ当時の大人は今の大人のように漫画の単行本を買う存在ではありませんでした。子供を巻き込まないとヒットは難しい時代だったのです。)。
大人マンガを中心とした雑誌「漫画読本(文藝春秋別冊:1955年創刊)」もありましたが、1970年に休刊し、その後は何年おきかに同社が漫画関係の増刊やムックなどを出す形に縮小していきました。
「漫画読本」は、現在その内容項目を見ていると、大人マンガだけでなく、長新太・古川タクなどのイラストワーク寄りのアーティストの作品、海外漫画の話題や作品紹介、ショートショート、漫画・文化評論などが盛りだくさんで、なかなかハイブロウな印象を受けます。
ダイヤモンドコミクスに関するネットの記事などを拾うと、「大人マンガ系作品が結局シリーズ全体の売上の足を引っ張った」というような説もあります。その真偽のほどは私には判断できませんが、同レーベルの守備範囲の広さは注目に値するのではないでしょうか。
以上のように扱っている作品ジャンルが多岐にわたっているだけに、初出の出版元も貸本から各少年雑誌、そして一般週刊誌から変わったところでは日刊紙に至るまで、非常にバラエティに富んでいます。秋田書店サンデーコミックス同様に「初出混合型」のレーベルといえるでしょう。出版元を眺めてみても、特に偏りはないように思えます。コダマプレスは自前の雑誌を持たないので、当然他社初出のみとなります。
もしもコダマプレス社の経営がもう少し持ちこたえることができて、ダイヤモンドコミクスがこの後に続く各社単行本刊行ラッシュの波にうまいこと乗れていたのなら、どのようなラインナップが追加されて、どんなレーベルに成長していたのでしょうか。
実質でたった51冊のシリーズではありますが、手塚治虫や石森章太郎・赤塚不二夫の作品は子供に買い与えても喜ばれそうな内容ですし、あくまで妄想ではありますが、「大人から子供まで手広くフォローできるレーベル」としてもう1・2年延命できていたなら、コミック世界の勢力地図もほんのちょっと違ったものになっていたかもしれません。単に「広く浅く」のラインナップでやっぱり薄命だったかもしれませんが…
パイオニアにして短命に終わってしまった(何しろ会社が終わってしまった)だけに、色々と想像をかき立ててくれる存在ではあります。
何しろ刊行を始めてすぐに消えてしまったレーベルなので、刊行とほぼリアルタイムに進んでいた連載(「ストップ!にいちゃん」など)については序盤が収録だけで立ち消えてしまい、その後別の出版社から改めて刊行されたものもあります。
連載漫画のコミックス化が始まってもしばらくは、連載→単行本化までのタイムラグが2,3年あるのは普通のことでしたが、「ミュータント・サブ」などは雑誌掲載から単行本化までの期間が当時としては画期的と言っていいほど短く、そういう意味でも珍しいんじゃないでしょうか。
コダマプレスは、その社名の示すとおり、レコード、というかソノシート販売事業を本業とする会社です。
設立は1959年10月6日。
発起人の田中京之介氏は、もともと法律系出版で有名な有斐閣に所属しており、「ジュリスト」などの編集長を務めた方だそうです。(コダマプレス設立後は同社専務に就任)
日本初のソノシート付きで「耳で聴く」コンテンツを前面に押し出した雑誌を刊行し、「音の出る雑誌」として話題を呼びます。
1959年11月10日に「歌う雑誌KODAMA」(月刊:シート4枚付属)
同年11月22日に「音のデラックス誌AAA」(隔月刊・シート3枚付属)の2種類をリリースしました。
シートには、音楽の他に朗読やオーディオドラマ・クイズ・英会話学習などの内容が吹き込まれていたそうです。
ちなみに同じ年の9月には、同業の朝日ソノラマの前身・朝日ソノプレス社が設立されています。
ソノシート雑誌の元祖は、フランスのソノプレス社が発行した「ソノラマ」なのですが、このソノプレス社と提携し、資本的には朝日新聞社が全額出資という形で生まれています。
そしてコダマプレスに遅れること1か月、12月10日には「朝日ソノラマ」を創刊しています。
("sonus"(ラテン語で「音」)と"horama"(ギリシア語で「見るもの」「ビジュアル」の意)から作った造語が「sonorama」)
これらの「音の出る雑誌」の滑り出しは好調だったのですが、しばらくしてやや低迷し、コダマプレス社も一時傾きかけますが持ち直します。
ソノシートが登場した当時、レコードプレーヤーやステレオセットは高価であり、ソフトウェアとしてのレコード盤もやはり値段が高いものでした。当時のフルアルバムの価格は1000円台後半〜2000円程度と、現在の邦楽CDアルバムとさほど変わりません。給与や物価指数が今とはかなり違うことを思えば、いかに相対的に高価であるかお分かりいただけると思います。シングル盤(表裏2曲収録)にしても300円程度だったそうです。
それに比べるとソノシートは10数曲入って400円程度・しかも読み物やカラー写真入りの冊子が込みでその価格ですから非常にお得感に溢れていました。
音質的にはどうしてもお粗末なのは、聴いたことがある方ならお分かりでしょう。そうしたハンデがあるとはいえ、簡易で安価なポータブルプレイヤー(ペーパークラフトのようなプレイヤーまでありました)で気軽に再生できて、しかも語りなどのさほど音質クオリティを必要としない内容が多いソノシートは、手軽さとコストパフォーマンスから親しまれました。
しかし1960年代前半に突入すると、高度経済成長の中で所得が増え、レコードやオーディオセットが手の届く存在になってきて、ソノシートはその優位性を保てなくなってきます。国民の娯楽がオーディオからテレビへと急速に移行した時期でもありました。
ホントか単なる噂か、真相は知りませんが、「ソノシートを回すとレコードプレーヤーの針が痛む」というのは確かに広く言われていました。実際に私も両親から言われていて、家にあるソノシートを聞こうとするといい顔をされないか、古いプレーヤーで回すように言われた記憶が鮮明にあります。
当時、ステレオセットというのは、いかに庶民でも手が出る存在になったとはいえ、やはり高価な物で、何か月も月賦を組んだりして買うことが多い貴重品でした。苦労して買ったせっかくのステレオを、ソノシートをかけて壊したり、高価な針をダメにしたくないというのは当然の人情だったのですね。そういう理由でソノシートが次第に敬遠されてきたのもまた確かなのです。
そんな事情もあって一時低迷するソノシート出版事業でしたが、テレビで人気の出た番組の主題歌やオーディオドラマなどを収録したソノシートが大当たりし、競合メディアであるテレビに助けられる形で復活します。
少年少女向け雑誌の付録に多用されたり、またソノシート付きのアニメ・漫画作品のムック出版が多数手掛けられました。
私の子供時代にはあまり見なくなっていましたが、兄がちょうどソノシート時代に育ったので、当時のものがけっこう実家に残っています。女の子はアニメの主題歌やアイドルの歌、男の子ですとウルトラマン直撃世代なので、「怪獣の鳴き声図鑑ソノシート」なんていう企画が人気だったようです。
コダマプレスも当然その波に乗り、ソノシート付きのムック「コダマ・まんがシリーズ」をいろいろリリースします。TVの人気番組ものだけでなく、番組化されていない漫画や、オリジナルの作品のものなども出版していたようです。
その他には、大判カードセット(ウルトラマンやサンダーバードなど)も販売していました。
しかし高度成長がさらに進むと、昭和40年代に入った頃から再び市場が低迷。
子供向けのものはまだしも(付録アイテムとしてはその後もしばらく命脈を保ちます)、音楽は完全に敷居が低くなったレコード盤にメインが移行し、音質に劣るソノシートは商品として戦えなくなってきていました。
1966年に急速に業績が悪化し、翌1967年には音楽ソノシートのリリースはほぼ終焉したそうです。
この衰退・終息の時期と、ダイヤモンドコミクスの誕生・コダマプレス倒産の年が重なっていることが非常に興味深く思えます。
これは単なる推測ですが、コダマプレスだけでなく、ソノシート出版事業界全体に、「もはやソノシートでは商売にならない」というかなり確たる見通しがあって、ソノシートを含まない純粋な出版事業にシフトしようとする流れがあったのではないでしょうか。
同じ時期にソノシート雑誌出版を始めた朝日ソノラマも、ダイヤモンドコミクスが生まれた1966年の11月から「サンコミックス」の刊行事業を始めています。テレビ番組関連出版で勝手がわかる子ども相手のコミック・特撮関連、出版を通じてそれなりにコネクションのある作家や出版社の版権を押さえつつ、漫画やムック類そのものを商売にしていこうと方向転換したように思われます。
一口にコミックスを刊行するといっても、一朝一夕でなしうることではありませんから、足元が崩れ始めたソノシート業界の潮流を見ながら、1年なり2年なり前から企画を進め、作家・作品の確保に奔走していたのではないでしょうか。
ライバルであった朝日ソノラマは昨2007年に無くなってしまいましたが、コダマプレスの終焉を思えば、「21世紀までうまいこと生きながらえた」と言っていいでしょう。
サンコミックスというレーベルも、実に1989年まで(最後の方はハロウィンコミックスでしたが)存続しました。
こうして見てみると、コダマプレスはソノシート雑誌創刊も日本初、新書版コミックスレーベルとしても一番手と、創立以来パイオニアとして口開けを2つも行ったにも関わらず、残念ながらその後の漫画単行本文化の隆盛を待たずに力尽きてしまったという感を強く持たずにはいられません。
[注]
文中では「ソノシート」という名称を使用しました。厳密には朝日ソノラマの持つ商標(現在は朝日新聞社が管理)であり、「フォノシート」あるいは「シートレコード」という一般名称を用いるべきなのですが、通りの良さを考慮してあえて「ソノシート」という表現に統一したことをお断りいたします。
<現在調査中の事柄>
・未確定分の初出情報
・1970年代にエコーコミックスを刊行した「こだま出版」との関係の有無
<参考記事・サイト様>
*「漫棚通信ブログ版」より、「新書版おとなマンガ」
なんだか言いたいことがすべて言い尽くされているようでちと凹みました;
*「フォノシートへの招待」 当時の関係者へのインタビューも大変面白かったです。