【誕生〜小学生編】

ピンクじゃないんだ事件

 それは昭和45年の6月7日。クソ暑い日の夜中でありました。
 予定日を二週間以上過ぎても生まれない難儀なお子さんも、ようやく生まれようとしていました。
 しかし、生まれる前からズボラなその子、気持ちいい胎内に長くいすぎて、寝返りを打ちすぎたせいか、臍の緒が首に巻き付き、呼吸困難を起こしておりました。
 苦難の末、ようやく出てきましたが、呼吸がなく、産声もなく、仮死状態で誕生。
 先生の人工呼吸でも泣かず、ひっくり返して、
背中をバンバン叩いて、ようやく産声を上げたといいます。

 その子は、当時七歳だったお兄ちゃんが、「妹が欲しい」と言い出したことで生まれたのでした。
 お兄ちゃんと来たら、保育園で、七夕の短冊を書けば「妹ができますように」、クリスマスに欲しい物を聞かれれば「妹!」・・・いやあ、弟に生まれていたらどんな扱いを受けていたのか不安になったりもしますが、それはさておき。
 お兄ちゃんは、念願の妹誕生に喜び勇んで、会いに行きます。
 そして開口一番、
赤ちゃんて、赤いから赤ちゃんでいうんだよね?これじゃ紫ちゃんか青ちゃん?
 そうです、呼吸が一時止まっていたため、その赤ちゃんは、しばらく全身紫になっていたのでした。
 まあ、その赤ちゃんが私です、ハイ。

飛んじゃう事件

 どうしてそんなことを考えたのか、今となっては全く謎です。
 二歳の時、婆ちゃん家の二階で、一人でヒマを持て余していた私は、「要するに、翼をはためかせれば、理論上人類も飛べるのでは?」という結論に至り、
実践してしまいました。
 もちろん階段を転げ落ちましたけれども。
 頑丈な子供だったのか、擦り傷ですみましたが、ベランダで結論に至らなかったのは英断というべきでしょう。

どうしてあなたはお兄ちゃんなの事件

 兄とか姉とか言う人種が、必ず下の者に一度は語ること。
 それは「あんたは、本当はうちの子じゃないのよ」と言って、からかうこと。
 私の兄も、例外ではなかった。しかし、設定がいささか凝っていた。

「いいかあ、零。おまえはな、実はお父さんとお母さんの子供じゃないんだぞ。」
 (妹はバカな上、兄の言うことをすぐ信じるクセがあるので、真に受けて既に半泣き)
「お前はなあ、捨て子だったんだ。踏切の上に捨てられていたんだけど、汽車が来て、
牽かれそうになるところを、お兄ちゃんが、閉まりかけてる踏切くぐって、助けてやってうちの子にしたんだ。危なかったんだぞ。」

 まあ、子供心に、最後の方は「怪しい」とは思いましたが。
 この場合、基本の「お前は捨て子」の他に、「緊迫感」、そしてさりげなく「兄のヒーローな感じ」を植え付けることで、妹へのインパクトは十分な話だと言えましょう。
 まあ、こんなことがなくても、十分すぎるほど「お兄ちゃん子」ではあったのですが。

なんでもいうこと聞きます事件

 確か幼稚園年少組の、お誕生会か何かの時だった。
 後で聞いた母の話によると、私はその時の先生と、今ひとつ反りが合わなかったらしい。先生の方も、私のことを「扱いづらい子供」と思っていた感じがある。(まあ、お遊戯さぼって本読んでたりしたからな〜)
 確か、ジュースを零した。それだけのことだったのに、何故か、「私が相当な悪ふざけをして、零してしまった」と先生は思ってしまったようで、烈火の如く怒り、私を廊下に出して、「
もうあんたみたいな子は知らない!!もう、いりません!!」と怒鳴ると、扉を閉めてしまった。(「いらない」だぞ。普通言うか〜?)

 さて、その頃の大道寺さんはすこぶる素直な子供であった。
 第一、何も悪いことはしていないので、叱られたわけもわからない。
 そこで、私の思考は「もういらない」→「この教室には不必要」→「
帰っていい」→「っていうか、帰れ」と変換。バス通学だった私が帰る手段はバスだけ。迷わずバス車庫に行き、ちょこんと乗って待っている。
「おう、零ちゃんどうした?」と尋ねるおじさんに、「先生が、帰れって言った」と応えれば、そりゃあおじさんは「風邪でもひいた」と思うさ(笑)
 そのままバスに乗って何事もなく家に帰る私。不思議がる母。
 やがて、慌てた先生がかけた電話で、母は全てを悟った。・・・・いやああ〜、あの頃の私は本当に素直な子でした〜。

口に出ちゃった事件

 幼稚園年長の頃。
 風邪をひいて寝ていた。ふと、漫画に出ていた「体温計をくわえる」真似をしてみたくなった。(家では、体温計は脇に挟む物であった)
 まあ、もうお分かりでしょうが、口にくわえて弄んでいるうちに。
 
ぱき。
ええ、口の中で割ってしまいました。
その瞬間、頭によぎったのはたった一つ。
お母さんに怒られる〜〜〜!!
そして、数分経ってから、「お母さ〜ん、怒らないでね。体温計割っちゃった・・・」
「い、イイから吐き出しなさいッッッッ!!!」

ああ、よかった。水銀飲んだのに何事もなくて・・・

先に行かないで事件

 夏の恒例行事・海水浴。休憩に寄ったドライブインを出るとき、娘の乗車を確認しなかった父親により、私を置いて出て行く車・・・
 まあ、行楽地に良くある風景(そうか?)ですが、その時、母が気づいて車が引き返してくるまでの2,3分の間、私の頭に駆けめぐる、思考の走馬燈。
 置いて行かれた→誰かに保護を求めなければ→名前と住所は言えるけど→郵便番号と電話番号は自信がない→って言うか、迎えに来なかったらどうしよう→もしかして、この辺りの誰かにもらわれて、よその子になったりして
それもまあ、一つの人生としてアリか。
 ・・・幼稚園児の考えることとは思えませんな。ちなみに、すぐに引き返してきて、事なきを得ましたが、道中、父はずっと母に注意散漫のかどで怒られていました。現在も注意力が散漫なので、いつもこの時の事を引き合いに出されては叱られているようです。